■「いろいろな人の“生きる”の中の1つに、ちょっとでいいから『Mリーグ』があってほしい」

――インタビューでは「トップの尊さ」というコメントがありましたが、まさにそういうところにつながってくるんですかね。

「そうですね。これだけ苦しい状況が続いて……。“麻雀が嫌いになりそうだよ”“『こんなだったらやらなきゃよかった』みたいに思う”とか思うでしょと。だけど、“僕は思いませんよ”と。

 この1回の苦しんだトップを取ったときのこの感覚や気持ちが自分の中では生きてきて。そうそう味わえるものじゃない。これを味わうことによって、やっててよかったなとか、もっと麻雀を好きになりましたっていう言葉につながっているんですけど。

 このトップが特別にならないように、だけど気持ちは応援してくれるみんなと同じだっていうことをちゃんと積み重ねていきたいなと思っています。

 だって、自分だけがうれしいものであっては、Mリーグはいけない。誰かがトップを取ったことが、見ている人の喜びになるものでなければ、やっている意味が本当にないと思うんですよ」

――応援してくれている人がいないと「意味がない」と。

「そうです。自分だけが“勝ちました!”でも誰も喜んでなくて、試合も見ていないな、みたいな。そんなものだったらやっている意味が本当になくて。ラスを取ったときにみなさんが“悔しい”と。“次こそ勝てよ”と。勝ったときには“本当にうれしいよ”と。そうじゃないと。

 僕は、あるファンの子が、いつも試合が終わるとツイッターに載っている感想をまとめて、僕のインスタのDMに送ってくれる子がいるのですが、“萩原さんが少しでも元気になってくれればうれしいです”みたいな感じで。それがラスのときでも“こんなにみんなが応援してましたよ!”とか。

 この前(12月19日)にトップを取ったときにも送ってくれて。逆にこっちがそれを読んで感動しちゃうっていうか。その内容は“嫌なことあったけど、(萩原さんがトップを取れて)明日もがんばれそう”とかいろいろあります。

“亡くなったおじいちゃんが僕が麻雀分からないときからいつも見ていて、唯一おじいちゃんが応援していたのが萩原さん。『この人の麻雀面白いんだよ!』ってずっと言ってた。だから、今日はおじいちゃんと乾杯します”みたいな」

――すごくいい話ですね!

「そういうちょっとした、それぞれの日常での小さなイベントとして。“生きる”という部分には、仕事があったり家族があったり、学生なら進学とか恋とか……いろいろな人の“生きる”の中の1つに、ちょっとでいいから『Mリーグ』があってほしい。

 そのなかで、自分が勝ったとき負けたときに“こんなにその人の人生の中の小さな心を動かすことができているんだな”っていうのが感じれて……。そういうのをすごくたくさん送ってくれて全部見ました。それが本当にうれしかったし、それを見たからもっと頑張ろうと。

 常に同じ気持ちではやっていますが、一回の勝負に対する気持ちの在り方みたいなのは再認識しなきゃいけないな、と。当たり前に試合に出て、当たり前に勝った負けたではダメだな、とあらためて思いました。

 俳優の仕事の都合で、今年あまり試合に出られていませんが、逆に一試合ずつがすごく大事な試合になったので、あらためて考えさせられる時間ではありますね」

【#2へ 「本田には今季一度、本気で厳しめに話したことがありました」『雷電』への思いと「麻雀プロ」の仕事論】

はぎわら・まさと 1987年、俳優デビュー。テレビドラマ『はいすくーる落書2』(90)で注目を集め、映画『学校』、『月はどっちに出ている』(ともに93)などで日本アカデミー賞新人俳優賞、『マークスの山』(95)、『CURE』(97)で、2度の日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。その後も、数多くの映画、ドラマ、舞台でも活躍。近年は映画『島守の塔』、『今夜、世界からこの恋が消えても』、『餓鬼が笑う』(ともに22)など話題作に出演。18年から「TEAM RAIDEN/雷電」に所属しプロ雀士としても活動している。

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