■ゴルフ場でビートたけしに

 長嶋が残したものは、印象的なプレーだけではない。球場の外の言動もスターにふさわしいものだった。前出のせんだ氏は言う。

「大学生時代の長嶋さんには、“好きな四字熟語を書いて”と渡された色紙にデカデカと“長嶋茂雄”と書いたという話もあるくらい。僕が懇意にさせてもらうようになってからも、そういう言動は多々ありますが、恐れ多くてツッコめなかった(笑)」

 たとえば、ゴルフで一緒にラウンドしたときなどは初回から、こんな調子。

「1打目から、いきなりOBを打ったんですけど、ニコニコしながら、“ファー”じゃなくて“ファール!”って(笑)。OBじゃなくてファールだから当然、打数にもカウントしないんです。でも、それがズルって感じじゃない。一事が万事、そんな調子でしたね」(前同)

 ゴルフで言えば、かのビートたけしが長嶋からゴルフに誘われた際、クラブハウスで落ち合うと長嶋が開口一番、「あれ、今日は誰とゴルフ?」と言った伝説もある。これには、せんだ氏が「僕もある」と続ける。

「ゴルフ場帰りに長嶋さんを田園調布の家まで送って、仲間と近くのサウナに行ったら、あとから、ご本人も偶然やって来て、“せんちゃん、久しぶり! 最近、ゴルフやってますか?”って。もちろん“さっきまで一緒だったじゃないですか”とは言えないよ(笑)」

■凄まじい記憶力

 まるで周囲を意に介さないように見えるのは、圧倒的なまでにプレーに集中しているからとも言える。

「長嶋さんはいつもスコアカードを持たずに回るんだけど、数字に関する記憶力も本当にスゴい。終わって話していても“2ホール目の3打目、よかったね”とか、一緒に回った全員のショットを、そらで全部、言えるんだよね」(前同)

■長嶋一茂置き去り事件

 幼い息子を後楽園に忘れて帰った「一茂置き去り事件」も、「つかみかけた感覚を忘れないうちに、早く帰って練習がしたい」という、野球に対する集中力が引き起こしたもの。野球への深い愛情も、長嶋を語るうえで外せない。

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