■王貞治の凄さ
通算868本塁打は今なお燦然と輝く世界記録で、2170打点、出塁率4割4分6厘、長打率6割3分4厘など、打撃主要3部門の通算成績でも、堂々の歴代1位に君臨する。
野球データの解析を専門とする株式会社DELTAのアナリスト・大南淳氏も、そのすごさをこう評する。
「過去のNPBでの成績と現在のMLBのそれを同列に比較できませんが、今季の打者大谷に比肩できる選手がいるとすれば、王さん。セイバーメトリクス的な観点からすれば、代名詞の本塁打はむしろ一側面。王さんの本質は、四球を選ぶ能力など、圧倒的な総合力の高さにあるんです」
現役時代に左の好打者として鳴らし、史上最多3度の三冠王に輝く落合博満に師事した愛甲猛氏は「技術だけなら、王さんのほうが大谷より上」と語る。
●ボールを飛ばす技術
「ボールを遠くへ飛ばす技術ってことだけで言えば、大谷は王さん、オチさんには及ばない。でも、彼には、それらを陵駕するパワーとスピードがある。俺自身の感覚で言えば、パワーとスピードの前ではどんな技術もかなわない。だから、同じ条件での勝負なら、勝つのは大谷にはなるだろうね」
とはいえ、令和の時代、トレーニング技術やスポーツ医学の進歩は、昭和とは比べものにならない。
「王さんは家や荒川コーチの自宅で素振りするときは、パンツ一丁で大鏡の前に立ち、筋肉の動き一つ一つをチェックしていました。落合さんはキャンプ中に星野、長嶋両監督にも見せない秘密特訓をしていました」(前出のジャーナリスト)