■鼻っ柱が強かったイチロー
その意味では、28年に及ぶ現役生活で、大きな故障をほとんどしなかったイチローもまた“無事是名馬”。異端と呼ばれた“振り子打法”でのデビューから積み上げた通算4367安打の大記録は、大谷も見上げるばかりだろう。
92年にはオリックスで1、2番コンビも組んだ松永氏は、こう語る。
「イチローはギリギリの打球でも、あまりダイビングをしなかったよね。それは、当時の練習でも同じだった。つまり、1歩目の速さとポジショニングができていれば、ダイビングの必要もないし、ケガも防げるから」
ルーキーだった92年のイチローだが、その鼻っ柱は強かった。
「あれこれ言ってくるOBに向かって、“だったら先輩が一度打ってみせてくださいよ”と返したぐらい、若き日のイチローも大谷と同じく自分ってものを持っていた。伊良部(秀輝)の速球の印象を聞いたら“そんなに怖くない”と返したぐらいだしね」(前同)
●大谷との共通点
さらに、松永氏は大谷とイチローに共通する精神性を見出している。
「打撃タイプは違うけど、固定概念にとらわれない感性の持ち主ってところは共通する。昔からパ・リーグには野武士みたいな個性的な選手が多くいた。彼や大谷が、ともにパ・リーグ育ちというのは、ある意味、必然だったのかもね」
感性は近しいイチローと大谷。しかし、その振る舞いは大きく違うと、愛甲氏は指摘する。
「他人にどう映るかを誰より意識していたのがイチロー。端で見ていても、キムタク(木村拓哉)のように、24時間イチローであることを、あえて自分に課していたように見えたしね。対して、大谷は喜怒哀楽をそのまま出す。その振る舞いがアメリカでも、あれだけ愛される秘訣じゃないかな」