■玉木宏演ずる深町洋の神業

 さて、あらすじに戻ろう。日本政府は『シーバット』が核兵器を搭載している可能性を懸念し、日米同盟の下、協力を求めるアメリカ政府の意に反し、『シーバット』の保護を決断。横須賀基地から海上自衛隊第2護衛隊群の出動を命じる。

『シーバット』は米第7艦隊の追撃を振り切り、東京湾へ入ると、海江田は単身、東京に上陸。独立国家「やまと」は日本政府と同盟を結ぶが、アメリカ政府は、なおも執拗に『シーバット』の撃沈を図り、第7艦隊によって東京湾が封鎖される。

 海江田のライバルで、海上自衛隊第2潜水隊群所属の通常型潜水艦『たつなみ』の艦長・深町洋(玉木宏)は、『シーバット』護衛のため、楯となる覚悟を決める。

「シーズン1最大の山場が、東京湾での大海戦。海自の第2護衛隊群が展開する中、第7艦隊と『シーバット』、それを護衛する『たつなみ』の間で戦闘が繰り広げられ、結果、第7艦隊は2隻の原潜を失い、『たつなみ』も大破して沈降します」(前出の軍事ライター)

■艦長の資質が重要

 その際、注目すべきは、海江田と深町、2人の艦長の神業的な操艦技術の高さだ。前出の菊池氏が言う。

「海上艦艇であれ、潜水艦であれ、艦は車のようにすぐ停まれません。艦長の命令が1秒遅れただけで命取りになりかねず、艦長の資質が特に重要となります」

 劇中の戦術は実戦でも通用するのか。さらに、原潜たった1隻で第7艦隊を翻弄することは可能なのか。専門家の分析を基に、リアル版『沈黙の艦隊』を検証してみよう。

■モーツァルトの交響曲を大音量で流して攪乱

 まず、『シーバット』艦長の海江田がモーツァルトの交響曲(41番ジュピター)を大音量で流して攪乱し、米原潜『キーウェスト』に魚雷を命中させるシーン。

「スプーン一つ落としても敵に位置を知られてしまう状況で大音量を流すと当然、敵艦に伝わります。劇中ではその音量や自艦の速度を秒刻みに調整していました。

 敵艦からしたら、音が小さくなったから相手が遠のいたと判断するのか、それとも、そうでないのか、その音に惑わされ、敵艦がどこにいるのか、分からなくなってしまうわけです」(菊池氏)

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