■“体当たり戦術”も実戦で使える

 さらに、『たつなみ』艦長が見せた“体当たり戦術”も実戦で使えるという。東京湾大海戦で、『シーバット』の楯となった『たつなみ』。

 艦長の深町は、米軍の原潜が発射した魚雷を「遅発信管」タイプだと判断し、船体で数発の魚雷を弾き飛ばす戦術に出た。これは、着弾した瞬間に爆発するタイプと違い、装甲や外壁を突き破ってから時間差で爆発する魚雷だ。

「着弾してもすぐ爆発しないわけですから艦に魚雷が当たっても、その時点ではただの鉄の塊にすぎません。したがってそれを弾き飛ばすことは可能です」(前同)

■通常型と原潜の違い

 では、『たつなみ』のような通常型でも、原潜相手に戦いを挑めるのだろうか。その前に通常型と原潜の違いは確認しておく必要があろう。軍事ジャーナリストの井上和彦氏が説明する。

「通常型は、ディーゼルエンジンで発電し、電池に蓄電する。その電力でモーターを回して推進力を得ています。したがって蓄えた電力がなくなってくると、再びディーゼルエンジンを回すために空気を吸入する必要があり、一度、海面に浮上しなければなりません」

 対して原潜は、長期間、海中に潜り、隠密行動を取ることができる。

「原子の熱で水蒸気を発生させて蒸気タービンを回し、推進力を得ているので、空気を吸入する必要がありません。長い間、海面に浮上せずに航行できるんです」(前同)

■沈没船の残骸に魚雷を打ち

 劇中では『たつなみ』が東京湾の底に眠る沈没船の残骸に魚雷を打ち、アメリカ海軍の原潜が発射した魚雷の磁器反応センサーを狂わせ、回避するシーンもあるが、「戦術として十分にありえます」(同)という。

 さらに『たつなみ』は逆襲に転じ、米海軍第7艦隊所属の原潜を航行不能に陥らせる。こうした劇中の展開に、「潜水艦戦の描写に限って言えば、リアリティがあります。けっして荒唐無稽ではありません」とは井上氏。さらに続ける。

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