「半割れ」で東京・大阪2大都市壊滅

 南海トラフ地震が起こった場合、日本各地に、どれほどの被害をもたらすのか。

「政府の有識者会議の試算によると、震度6弱〜7の強い揺れが、東海〜九州地方までの広範囲で、数分にわたって続きます。

 震源域に近い高知県黒潮町の沿岸に最大34メートルの巨大津波が、また、大阪府に5メートル、東京都にも3メートルの津波が到達する可能性があります」(全国紙科学部記者)

 最悪の場合、死者(行方不明者を含む)は全国で約23万人、約209万棟の建物が全壊もしくは焼失。発災直後は、中京圏と近畿圏で1000万人以上の帰宅困難者が出て、1週間後には約880万人の避難者が発生するとされている。

 また、日本の経済も大打撃を受けることになる。

「工業製品の出荷額が国内シェアの7割を占める工業地帯、太平洋ベルトが被災し、飛行場や新幹線などの交通網が寸断。

 経済的被害は最大で約220兆円と推計され、これは東日本大震災の被害の10倍以上、日本の国家予算の2倍超です」(経済ジャーナリスト)

 加えて、高層ビルやタワーマンションが立ち並ぶ近代都市では、新たな被害が想定される。その元凶となるのが「長周期地震動」だ。

「長周期地震動とは、大きな地震で生じる、長く、ゆっくりとした揺れのことを指します。高層ビルや橋などを揺らしてダメージを与えるだけでなく、埋め立て地の液状化も引き起こす。

 そのため、特に都市部に甚大な被害をもたらします」(前出の梅田氏)

 2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で目撃された、ビルがしなるように揺れる光景は、長周期地震動によるものだ。

「日本の高層ビルは長周期地震動に耐えられるように設計されているので、倒壊する可能性は低い。だが、エレベーターが故障して閉じ込められる、ビル内部の家具が転倒して人が下敷きになる、ガラス窓を突き破って家具が外へ落下する、といったケースが考えられます」(前同)

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