渡米後はノーステップ打法へ

 ちなみに、渡米後の大谷は、元同僚のプホルスらを参考に、ノーステップ(正確にはヒールダウン)打法へと自らスタイルチェンジ。

 マッチョな見た目も相まって、本塁打後の“確信歩き”からは、今や王者の風格を感じるほどだ。

「渡米後に変わったと、よく言われてるけど、彼はアッパースイングじゃない。

 右肘を抜くスイングに変えてるから振り上げるフォロースルーになってるけど、コンタクトする瞬間は水平に近い。だから擦っても意外と飛ぶんや」(同)

左手の押し込みが利くようになった説は

 他方、伊勢氏は本塁打量産の要因とされる「右肘手術の影響で逆に左手の押し込みが利くようになった」という説には、「左手押し込みも当然、大事やけど、打撃の軸となるのは、やっぱり右手」と異論を呈す。

「現に4月5日のカブス戦で打った2号なんか、右手一本で左手は何にも使ってない。去年のWBC強化試合・阪神戦の、いわゆる“膝付き弾”もそうやんか。彼自身も狙ってるわけやないとは思うけど。逆に言えば、右手首が返ってないから、右手で押し込んでいるとは言えるな」(同)

三冠王獲りの最難関、首位打者

 41打席目での初アーチから、憑き物が取れたように快音を響かせる現在の彼は、どう見えるのか。

 伊勢氏が「あくまでワシの見解」と、こう続ける。

「高い位置で作ったトップから、常に一定の入射角を保ったままスイングができている。見逃し一つ取っても、本人は“今ので三振なら、しゃあない”と割り切っているように見えるわな。

 となれば、簡単には崩れない。ますます誰も手をつけられへんようになる」

 期待の三冠王獲りの最難関とされるのが、目下、大谷がトップを走る首位打者。

 ナ・リーグでは実に87年ぶりとなる快挙に向け、視界はすこぶる良好だ。

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