先発試合の不敗神話は球団タイ記録

 一方、不在の投手・大谷に代わり、全米を魅了しているのが、もう一人の“ショウタイム”こと今永昇太だ。今季、ここまで無傷の5勝。先発試合の“不敗神話”は、125年前のジャック ・テイラーに並ぶ、球団タイ記録の「7」まで伸びた。福島氏は、こう驚きの声を上げる。

「目を見張ったのが、4月7日のドジャース戦。雨天中断のため惜しくも4回で降板しましたが、大谷らを擁する超強力打線を相手に被安打2、無四球無失点。全43球のうち、実に34球がフォーシームという圧巻の投球を見せました」

 早くも「今季、最も成功した補強」との声も上がる、そんな今永の快投を支えているのが、大谷をも翻弄した、このフォーシーム。その凄さを、藪氏は投手目線で、こう言う。

「他の投手と比較しても、178センチと上背はなく、ストレートの平均球速も92マイル(約148キロ)と速くない。そこに惑わされている部分があると思います」

 では、なぜ打ち損じてしまうのか。

「打ち頃の球が来たと手を出したら、手元でホップして、まんまと芯を外される。平均で2500回転を超えてくるスピンレートからしても、どんな打者でも初見で対応するのは相当、難しいはず」(前同)

 このスピンが今永の最大の特徴だという。

「大リーグの平均が2386回転なので、ずば抜けています。昨季、新人として勝を挙げた千賀滉大(31=メッツ)は平均2283、10勝を挙げた大谷も2260。それ以上ですから、ボールが伸びてくるんです」(野球専門誌記者)

 実際、大リーグ全投手のフォーシーム割合が30・7 %であるのに対し、今永のそれは先発6試合目までで58・3%と他を圧倒。そのうえ、与四球は規定投球回に到達する投手中で最も少ない、わずか5つと、制球力でも群を抜く。

「とにかく打たれるまではフォーシームとスプリットの2球種で、このまま押すべき。もしかしたら本人が戦略的に隠しているのかもしれないが、打者の意識が他の球種に向いていないのも、彼には好都合。全30球団が必ず1カードは当たる日程のため、各打者との対戦数が増えない、というのも追い風ですよ」(藪氏)

 日本人投手の主要タイトル獲得は、2度の最多奪三振に輝いた“先駆者”野茂英雄の他には、ダルビッシュ有(37=パドレス)が13年に最多奪三振、20年に最多勝を獲ったのみ。新人王も、野茂と佐々木主浩イチロー、大谷と投打合わせて過去4人だけに、期待は高まる。

「対抗馬は、やはりドジャースの山本由伸(25)。カブスも中地区で2位につけるなどチーム状態はいいだけに、ハイレベルな争いが期待できそうです」(福島氏)MLB公式サイトが今月7日に発表した新人王の模擬投票によれば、その由伸を抑えて、今永が1位。

 ナ・リーグを熱くする日本人対決にも注目だ。

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