予測不能「水蒸気爆発」が告げる
富士山噴火と伊豆・小笠原沖大地震


「単に一つの火山が噴火しただけではなく、周辺火山の噴火や大地震の予兆である可能性が高い」

わが国有数の火山学の権威である琉球大学名誉教授の木村政昭氏は、御嶽山の噴火をこう分析する。

今回の噴火は、「水蒸気爆発」と呼ばれるものだ。水蒸気爆発は、地下の水脈がマグマに触れることで急激に熱せられ生じる。水が気化する過程で体積が膨張し、上昇圧力となって噴火するのだ。マグマに熱せられた地下水脈が気化すると、その体積は1000倍にもなるというから驚きだ。

火山の水蒸気爆発は、1995年の焼岳(長野県)、2000年の有珠山(北海道)の時も確認されている。

御嶽山は07年にも噴火しているが、その時もやはり水蒸気爆発が原因だった。

「地下水脈の正確な位置を把握するのは不可能。そのため、突発的に発生する水蒸気爆発は予測が非常に難しい」(気象庁関係者)

今回の噴火が、予兆に乏しく突如として発生したのはそのせいだ。ただ、「噴火が"突発的なもの"である以上、"噴火の連鎖"を心配する必要はない」とは言えない状況だという。

「水蒸気爆発が生じたということは、マグマが上昇したことに他なりません。ポイントは"なぜマグマが上昇したか"です。それは3年前に起きた東日本大震災の影響が残っていると考えるべきなんです」(前出・木村名誉教授)

2011年3月の東日本大震災は、日本列島が乗る海底プレートが大きくズレたことで起きた。

「地震を引き起こした太平洋プレートは、現在も日本列島の下に潜り込む動きを止めていません。それが火口下にあるマグマ溜まりへ圧力をかけ、マグマを上昇させているんです」(前同)

マグマの上昇が招くのは、水蒸気爆発だけに限ったことではないのだ。

「昨年11月に噴火した西之島(東京都・小笠原諸島)ではマグマが地表に出る火砕流噴火でした。今も溶岩が噴出しています。続いて今回の御嶽山の水蒸気爆発。これは富士火山帯周辺のマグマ溜まりが上昇している何よりの証拠。御嶽山が最北、西之島が最南。そして中央には富士山。つまり、富士山を含む御嶽山周辺の火山は、いつ噴火してもおかしくない状況と考えるべきです」(同)

さらに火山の噴火だけでなく、「大地震も起こり得る」と木村氏は言う。

「太平洋プレートの両端には"地震のストレス"が残っています。プレートの南端は小笠原諸島の東側。ストレスが大きくなれば、ここを震源とする大地震が起きても不思議ではない」

"火山大国"ニッポンの宿命か……。

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