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具体的に命の危険を感じたことは4~5回はあったよ。もちろん単に疑心暗鬼になってしまっただけの場合もあり、取材に同行した録音技師と2人で思わず笑ってしまったこともあったが、それが続くと逆にリラックスし過ぎてしまう危険もある。一瞬で状況が変わってしまうので、疑心暗鬼ぐらいがちょうどいいのかもしれない。フアレスにいたときには、2回ほど強烈なプレッシャーを感じた時があった。間違いなく「お前たちを見張っているぞ」というメッセージが明確に伝わってきたので、すぐに引き上げたんだ。

実は、今回は潜入取材は一切しなかった。取材対象には必ず「自分が誰であるか」を明確に伝えて取材をした。1人の人物だけを追ったり、1つの事件だけを追わず、全体を描くことを心がけたので、逆に安全だったんだ。


「危険ドラッグ」などが蔓延するなど、日本でも近年ドラッグは社会問題化している。インターネットの発展によって麻薬組織が年々グローバル化している現在、メキシコの現状はけっして対岸の火事ではない。

日本のことはまだあまりよく知らないけど、これは映画なので、エンターテイメントとして愉しめる作品を作ったつもりだ。ビジュアルが美しく、しっかりしたストーリーがある。その内容には自信がある。ドラッグカルチャーを描いた作品だが「人間はなぜ悪いものに魅力を感じてしまうのだろう?」 という問いかけも、この映画のテーマのひとつである。現実にその「悪」がカルチャーを生み出しているし、日本にもそれは存在すると思う。そのどこからが危険なのかというボーダーラインを探ることもがまた、この映画のテーマなんだ。
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