「タカ派の首相が13年以降一度も靖国神社に参拝していないのも、イデオロギーを離れて経済に注力したほうが、広く支持を集められると分かったからです。現在5割を切った支持率も、必ず回復するでしょう」(前出の政治部記者)

 第二次安倍政権のもう一つの特色は、強烈な“官邸主導”だ。「党や官僚の意向に左右されることなく、首相や各省庁の大臣がトップダウン的に政策を決めていく傾向が強い。これは、かつての師・小泉純一郎元首相に学んだものでしょう」(前同)

 小泉氏以前の自民党政権では各派閥の会長が推薦する議員をバランスよく閣僚候補にするなど党内調整を重視していたが、これを打破したのが小泉政権だった。「“自民党をぶっ壊す”とブチ上げた小泉さんの首相就任当時は、党内は敵だらけ。しかし、小泉さんは自ら閣僚を選ぶことで、党や永田町の常識に神経を使わなくてすむ環境を作り出したんです」(浅川氏)

 自ら閣僚や重要政策を決め、“絶対権力者”として君臨することで「小泉とその他」の構図を作る。この手法を、小泉氏に官房長官や幹事長として抜擢された安倍首相は間近で見ていたのだ。

「官邸主導のメディア対策も“小泉仕込み”です。小泉氏はスポーツ紙やテレビのワイドショー、週刊誌などの記者とも積極的に会い、庶民から好まれる首相像を作り出しました。一方、安倍首相は、大手メディアのトップと頻繁にコンタクトを取っています。すると、現場は上の意向に配慮し、首相に好意的な記事を掲載する傾向があるんです」(前出の鈴木氏)

 結果的に高支持率がキープされ、選挙で勝てるとなれば、党内の反対勢力も手出しできない。「小泉氏が抵抗勢力を抑え込んだのも、この方法です。安倍政権ではさらに、政敵と目された石破茂氏を発足当時は要職につけて骨抜きにするという権謀術数を見せました。一度牙を抜かれた石破氏の存在感はその後、閣外に出ても回復せず、今や党内は完全に“安倍一強”です」(前出の政治記者)

 前回の反省を生かしつつ、“官邸主導”を徹底したうえそこに謀略も加えた安倍首相は、もはや“無双”モード。「17年初頭と見られていた衆議院の解散を見送ると発表したのも、選挙をエサに党内をまとめる必要もないほど、政権基盤が固まったということでしょう。この調子なら、小泉氏の在任期間を超えるのはほぼ確実。さらに、3月の自民党大会で総裁の任期が3期9年に延長されるため、最長で東京五輪後の2021年まで務めることも考えられます」(自民党関係者)

 もし21年まで首相でい続けるなら、小泉氏どころか、大叔父にあたる佐藤栄作(在任期間は歴代2位の2798日)、歴代トップの桂太郎(2886日)両元首相をも超えることになる。

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