「しかし、日数だけの問題ではなく、安倍首相は小泉さんができなかったことにも次々に手をつけており、実績の上でも超えたと言っていいと思います」(前同) 株価の“超回復”もその一つだが、外交面では何より、大きな転換点を迎えたアメリカとの関係がある。「16年5月に、アメリカのオバマ大統領が現職として初めて原爆投下の地・広島を訪れました。戦後の日米関係において大きな意味を持つ、この訪問を実現させた手腕はかなりのものですよ」(前出の政治記者)

 さらに、12月26日には太平洋戦争の戦端を開いた場所であるハワイの真珠湾を訪問。これも現職総理としては65年前の吉田茂氏以来で、戦後の日米関係にとって重要な年になった。「再登板当時、安倍首相は米国にはほとんど相手にされていませんでした。ところが、安定した政権運営のもと、アメリカとの対等な関係を国際社会にPRできるほど成長したということでしょう」(浅川氏)

 一方でロシアに対しても、北方領土交渉の巻き返しのため、年明け早々に訪露の意向。「ウィンウィン(相互に利益があること)の関係で領土問題を解決していく」という意欲を示した。「先の首脳会談で経済協力という“お土産”だけ持って帰ったプーチン大統領に、今度はお土産をもらいに行くわけです。北方領土の返還、日露平和条約締結の道筋をつけることができたら、戦後日本にとって大きな歴史的事業となります」(前出の自民党関係者)

 また、外交のみならず安全保障面でも、安倍首相は戦後、誰も成し遂げられなかったことを実現している。「集団的自衛権の問題で憲法解釈を変え、さらに自衛隊の活動に駆けつけ警護の条項を付与した。これで、自衛隊は法的に他国や武装勢力への攻撃が可能になった。これこそ歴史的大転換であり、事実上の改憲だと言えます」(前出の有馬氏)

 そして、長期政権の果てに首相が最後に狙うのは、悲願の憲法改正だ。「それには時間が必要です。そのための総裁任期の延長であり、ここまで経済を重視してきたのも、その地ならしです」(前出の鈴木氏) 確かに、改憲こそ、小泉元首相どころか、「自主憲法の制定」を党是としてきた戦後自民党の歴代内閣が手さえつけられなかった大事業だ。はたして、安倍首相は、その大願を成就できるのだろうか?

「改憲には、天皇陛下の生前退位の問題も関係してきます。有識者会議では一代限りの特別措置法で対応するという意見がありますが、陛下ご自身は恒久的な制度を望んでおられます。ところが、その場合、本格的に憲法を変える必要があるため、首相が目指す9条改正などの政治スケジュールが大きく変わる可能性が出てくるんです」(前同)

 大事業達成にはまだまだ多くの関門が待ち受けるが、そこは何せ“持ってる”首相。スキャンダルも批判も乗り越えて、気がついたら、史上最強の総理大臣となっているのかもしれない。

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