「電話を操作する際の猫背気味の姿勢が、首や、背骨の上部にある頸椎と胸椎のちょうど境目に大きな圧をかけるのです。結果として、椎骨動脈から脳に十分な血液を供給できなくなり、肩こり、めまい、吐き気、手足のしびれといった症状をも招くんです」(同)
これを専門用語では「椎骨脳底動脈症候群」と言うそうだが、『宮元通りクリニック』(東京都大田区)の渡会敏之院長によれば、「脳への血流が悪くなることで、最悪の場合、脳梗塞を招く可能性もあるのです。また、椎骨には自律神経も通っていますから、そこが圧迫されてうつ病を発症、その影響で自殺する危険性すらないとは言えません」 この椎骨脳底動脈症候群で導かれるうつ病や精神不安定を警鐘する医師の声は、日に日に高まっているという怖いものなのだ。
東京都台東区の『スポーツ整体WALKIN』の院長で整体師である渡辺真一氏も、「成人の頭の重さは、およそ6キロ。ボウリングの球に相当する重さがありますから、猫背の状態では、首に過度の負担がかかり、頭部への血流を阻害。結果、さまざまな体調不良を引き起こします」と指摘。たかがスマホと侮ることはできないのだ。
たとえ最悪の事態を招かずとも、携帯電話の使用は体の節々の痛みや違和感をもたらすことがある。肘に軽い痛みやしびれをもたらす「スマホ肘」も、その一つだ。「スマホを使用する際、機器を片方の手に持った状態で、さらに親指一本で画面の操作をするなど、ふだんの生活ではなじみのない動きをします。結果、これが肘の筋肉に炎症を起こしてしまうのです。スマホ肘は正確には『上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)』と言います」(前同)
現代社会特有の腱鞘炎とも言えるこの症状は、放置しておくと痛みが増し、他の症状をも引き起こす厄介なもの。しかも、スマホのみならず、ガラケーやパソコンのマウスを使っていても引き起こされるのである。「ひと昔前は、テニスやゴルフなどのスポーツをしている人特有のものでしたが、最近増えていて、それが原因と思われる肩こりや頭痛に悩む中高年の方が多くいらっしゃいます」(同)
眼精疲労やドライアイなどの目の症状から始まり、肩こり、手足のしびれ、吐き気、目まい、さらには、うつ病から脳梗塞と、スマホとガラケーは万病のもとと言い切れるのだ。それらを回避するために何をすべきなのか――。ここからは専門家3人の対策術を公開しよう。