「シマちゃん(玉乃島=横綱昇進時に玉の海に改名)の死を受けて、周りからは、“これで北の富士時代だ”なんて言ってもらったりもしました。実際、一人横綱となった翌十一月場所では、8回目の優勝を果たしているんです。でも、シマちゃんがいなくなったから、“北の富士時代”になるわけじゃないんだなぁ」

 気持ちの張りを失い、休場が増加。その後、同世代の横綱・琴櫻が74年7月場所前に引退を表明したことが“決定打”となった。「私も、この場所は進退を賭ける場所になったんですが、気力がもう残っていなかった。琴櫻関の引退で、ぽっかり心に穴が開いてしまった……」

 初日、2日目と連敗し、報道陣に引退を告げた。「“引き際はきれいに”という師匠との約束どおり、私は報道陣にきっぱり答えたんです。そうしたら、師匠が、“もうひと場所くらい取ったらどうだ”と困惑していましたけどね(笑)」

 この北玉時代だけではなく、初代若乃花には栃錦、大鵬には柏戸、そして貴乃花には曙。角界が盛り上がった時代には、横綱のよきライバル関係があった。稀勢の里の昇進に伴い、角界は00年春場所以来の4横綱時代を迎える。大関時代同様、稀勢の里にはモンゴル出身の3横綱が立ちはだかるが、最大のライバルは白鵬だろう。

「対戦成績は、43勝16敗と白鵬の圧勝ですが、稀勢の里は白鵬の連勝記録をストップしてきた“白鵬キラー”の一面がある。大鵬の持つ歴代最多勝(69勝)に迫る勢いだった白鵬の連勝を63で止めたのも稀勢の里ですし、その後も43連勝、23連勝を止めています。しかも稀勢の里は今回、千秋楽で白鵬を破ったことで横綱昇進を確約された。そういったことを含め、2人は因縁のライバルなんです」(前出の角界関係者)

 白鵬は現在31歳で、稀勢の里とほぼ同世代。今後も2人の手に汗握る戦いはしばらく続くだろう。

「責任のある地位だと思うし、負けたら終わり」 そう語った新横綱は、自らの時代を切り開くことができるのか。期待しよう。

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