では、認知症の原因となる、これらの“脳のゴミ”の蓄積を防ぐには、どうしたらよいのだろうか? 「アルツハイマー型認知症は“脳の生活習慣病”とも呼ばれます。生活習慣病全般と密接な関係がありますが、特に糖尿病は認知症の原因であり、悪化因子です」

 私たちの体内では、膵臓から分泌されるインスリンが、脳の栄養源であるブドウ糖の働きをコントロールしている。「実は、使用済みのインスリンが分解される際、脳のゴミであるアミロイドβも同じ酵素によって分解されます。ところが、血糖値が高い状態が続くと、インスリンが過剰に分泌され、その結果、アミロイドβの分解が追いつかなくなって、蓄積されていくのです」

 乱れた生活習慣が脳の中にゴミを蓄積させ、認知症の発症を招くのだ。「逆に言えば、悪い習慣を少しずつ見直していけば、認知症を遠ざけることが可能です」

 認知症を遠ざけるための暮らし方の工夫をリストアップして、羽生氏に解説してもらった。まずは、生活習慣病を予防しながら脳に良い栄養を送り、脳のゴミがたまらないようにするための食生活のコツから紹介しよう。

 食事は1日3食、規則正しく食べること。「朝食抜きや不規則な食事によって血糖値が乱高下すると、糖尿病を招くだけでなく、脳の神経細胞にもダメージを与えます」

 食べ過ぎも禁物だ。腹八分目の量を、よく噛んで食べることを心がけたい。「栄養過多はメタボのもと。また、噛むことによって脳に良い刺激が伝わります」

 虫歯や歯周病で歯を失わないために、歯をよく磨くことも大切だ。「特に歯周病は生活習慣病との関連も深いため、口腔ケアには注意しましょう」

 節酒・禁煙を守ることも、忘れてはいけない。「多量のアルコールを飲み続けると脳の前頭葉の萎縮が進み、最終的に“アルコール性認知症”を引き起こします。タバコもアルツハイマー型認知症の発病を促すことが分かっています」

 良質の栄養を送り込んだら、次は脳を鍛える番だ。高齢になっても動ける体を維持するためには、まず、筋肉の量を増やすこと。「若いうちはメタボにならないことが重要ですが、65歳を過ぎたら食べ方を切り替えます。筋肉の材料になる肉や魚、大豆製品などでタンパク質をしっかり摂ったら、食後30~120分以内にストレッチ運動や軽い筋トレなどを行って、アミノ酸が効率よく合成されるのを促しましょう」

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