成長ホルモンは、睡眠中に疲れを取るほかに、さまざまな働きをしている。たとえば、代謝を高め、脂肪の燃焼を促すのも、その一つ。また、免疫機能を正常に保ち、病気への抵抗力を上げ、生殖機能を正常に保つ働きもしている。成長ホルモンの分泌が低下すると、これらに不具合が生じるうえ、記憶力の低下や老化も進行していく。

 さらに、枕が悪くて熟睡できなければ睡眠中に自律神経が整えられなくなり、心拍異常や発汗、神経障害などの症状も出てくる。「睡眠不足が、うつ病のきっかけになることも多いのですが、枕を変えてよく眠れるようになったことで、うつ病が改善したケースもありました」(大村院長)

 また、不眠や睡眠不足の人は短命になるという研究結果も、国内外で報告されている。たとえば、カリフォルニア大学の研究では、睡眠時間と死亡率の間に明確な因果関係が認められることが報告されている。

 日本では、名古屋大学が11年間にわたって睡眠時間と死亡率の関係を調査した結果、睡眠時間が4時間30分未満の人の死亡率は、7時間睡眠の人と比べて男性で1.62倍、女性で1.60倍高かったという結果が出たという。枕が体に合わず、熟睡できなければ寿命も短くなるし、逆に良い枕で安眠する人は寿命も長くなるというわけだ。

 では、“体に合ったいい枕”とはどんな枕なのか? 読者の中には「もしかして、そばがらの枕?」と考えた人もいるはずだが、確かに枕の素材も、寝心地を決める重要な要素となるという。

 だが、大村院長によると、素材以上に大切なのは“枕の高さ”だという。どんな高さの枕がいいのか? 「高さは、その人の体格や普段の姿勢(猫背かどうかなど)に関係するため、個人差があります。私は“枕の上に仰向けに寝たとき、水の上に浮いているような感覚になれる高さ”が、その人に最も合った高さの枕だと説明しています」(大村院長)

 体が抵抗を感じない、気持ちいい枕が理想というわけだ。これは枕の高さを調整して試すうちに実感できるようになるというのだが、もっと簡単な方法はないものか? そこで、前出の小林院長は次の方法を教えてくれた。「まず、壁に背をつけて肩甲骨が当たるように立ちます。首のカーブの一番深いところ(壁から一番遠いところ)までの距離が、基本的な枕の高さになります」

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