「湯田中温泉(長野)や姥子元湯(神奈川)を訪ね、実際に湯に浸かるとアトピーのかゆみが治まったり、ひと晩で治ったり……という話を聞きました。“傷の湯”としては、湯河原温泉(神奈川)や、坂本龍馬が刀傷を癒そうとした新川渓谷温泉郷(鹿児島)の塩浸温泉も有名です。“信玄の隠し湯”など、戦国武将の名前を冠する“~~の隠し湯”という温泉は、武将らが必要に迫られて開発、確保したので、傷によく効くはずです」(前同)

 それらの温泉が傷に効くのは、湯自体に殺菌、鎮静、さらには、皮膚(真皮)の弾力線維を強化する働きがあるからだという。

 骨折や怪我に加えて、痛風や糖尿病への効果までも期待できるのが、温泉津温泉(島根)。すぐ近くにある石見銀山とともに世界遺産に登録されており、室町時代から続く湯治場らしい佇まいが情緒に溢れている。「黄濁色に濁る、どっしりとした成分の濃い湯に何日も浸かって汗を流すうちに、擦り傷も発疹も、みるみる治ってゆくんだよ」(70代の湯治客)

 タイやアワビなどの新鮮な魚介類に舌鼓を打ちながら、レトロな街並みをそぞろ歩けば、身も心もすっかり回復しそうだ。

●胃腸・肝臓に効く

 湯を飲んで体内に取り入れる、つまり“飲泉”は、湯に浸かるだけよりもダイレクトに効く。4万種類もの病を治すとされる四万温泉(群馬)は、飲むと胃腸病に良いとされ、公共の飲泉所も複数ある。苦味も酸味もなく、すっきり飲める。

 四万温泉を訪れたらぜひ、そこから車で10分ほどにある沢渡温泉(群馬)にも立ち寄ろう。泉源地近くの共同浴場にはコップも置かれ、番頭さんが、「すごく体にいいから飲んでいってね!」と勧めてくれた。

 石川氏が勧めるのは、“こけし”で有名な鳴子温泉郷(宮城)だと言う。「鳴子の御殿湯のあたりは、病院と提携した温泉療養プランにも取り組んできました。重曹泉系の湯は肝臓に良いので、噛むように飲みましょう。肝機能が抜群に良くなります」

 嬉野温泉(佐賀)には魅力的な料理もある。内臓に効くという温泉水で作られる「温泉湯豆腐」がそれで、トロリと滑らかな舌触りで絶品そのものだ。「温泉街を妖しく彩る夜のお店を取材していた折、湯豆腐と佐賀牛で、ついつい地酒『東一』が進んでしまい……二日酔いになるかと懸念していたんですが、次の日は意外とケロリとしていました」(前出の温泉ライター)

“風呂尽くし”の取材とは、なんとも羨ましい。

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