麻生財務相と同じく、安倍政権を支える重要閣僚の一人、岸田文雄外相も動き始めている。安倍首相は4月に開かれた岸田派のパーティで、「岸田さんにはもっと上(首相)を目指してほしいが、もうしばらく我慢してほしい」と岸田外相への禅譲をほのめかしている。

 事実、岸田外相は、次の総理総裁の最有力候補といわれるが、「宏池会(岸田派)が今年で結成60周年の節目を迎えたこともあり、派閥メンバーからは“首相のイエスマンではなく、はっきりとポスト安倍を意識した動きをするべき”との声が上がっています。また、加計学園騒動後は、“このまま安倍政権に協力し続けると、共倒れになる恐れもある”との不安も出てきました。ここらが“決断の時”でしょう」(前出のデスク)

 こうしたムードを受けて、岸田外相も踏み込んだ発言をするようになってきた。安倍首相が憲法9条を改正し、「自衛隊の存在をしっかりと位置づける」と表明したことに対して、岸田派の研修会で挨拶し、「当面、憲法第9条自体は改正することを考えない。これが私たちの立場ではないか」と主張したのだ。

「これは安倍政権そのものに対する“ノー”の意思表示だと言えます。過去の例からも、タカ派的な政権の後はリベラルな政権が誕生しています。その意味で、岸田氏には十分チャンスがあるはず」(前出の本澤氏)

 8月に噂される内閣改造だが、その際の新しい閣僚名簿に岸田氏の名はないとの情報も。“安倍首相のイエスマン”が、いよいよ牙を剥くときかもしれない。今夏の改造で、もう一人、閣僚名簿から名前が消えそうなのが、同じく安倍政権の重鎮・菅義偉官房長官だ。

「本人は党の幹事長を強く希望しているそうです。4年半、安倍政権の女房役を務め、安倍首相や閣僚の失言を鎮める役回りにうんざりしている面もあるんでしょう。ただ、菅さんには、麻生さんや岸田さんとは違って、総理になるという野心はありません。安倍政権よりも、次の政権での立ち位置を確保しようというのが、幹事長を希望する理由です」(自民党関係者)

 麻生、岸田という重要閣僚のみならず、女房役まで微妙な動きを始めた安倍政権。内部崩壊が静かに進行しているという話は、事実のようだ。そうなると、「本来は安倍首相とは水と油の関係」(前同)という二階俊博幹事長の動向も気になってくる。

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