「1960年は22位と、長野は決して優秀ではありませんでした。当時は長野も脳卒中の死亡率の高さがワースト県で、80年代から県を挙げて、減塩運動を始め、積極的に地元野菜を多くとるなど、食生活を改善した結果です。実は、長野の医療体制は全国平均並みで、突出して良いわけではありません。逆に言えば、県が一丸となって意識改革を行えば死亡率は大きく下げられる好例です」(牧氏)

 その逆に、従来の低カロリーの伝統食中心から、高カロリーの欧米食を多くとるように食生活が変わったせいで、死亡率が大きく高まった顕著なケースが沖縄だという。戦前からの食文化がまだまだ残っていた1990年では45位だったが、アメリカ統治時代の影響がジワリジワリと浸透し、現在では若者の多くが欧米式の食生活に。その結果、死亡率ランキングも17位へと急上昇したようだ(1960年は日本復帰前のためデータなし)。

 なお、今回の調査で、有識者が最も注目していたのが福島県。2011年3月の原発事故後、初の調査だったために注目されていたのだが、案の定というべきか、1990年の19位から6位と、かなりワースト順位を上げている。「死因別で見た場合、急性心筋梗塞の死亡率が福島は全国トップなのです。これは多くの県民が避難を余儀なくされ、そのストレスから来ている可能性があります」(牧氏) 今も苦しむ被災者のことを思えば、胸が痛むばかりだ。

 ここでもう一度、記事冒頭の地図を見てほしい。日本列島の中心部、長野から西に岐阜、滋賀、奈良の色が薄い(死亡率が低い)のが、お分かりだろうか。これに関しては、興味深い見方が一部の医学研究者の間である。

「47位の長野、46位の滋賀、45位の奈良に共通するのは、“海なし県”という点。同様の山梨、岐阜だって悪い順位じゃありません。古来、海から遠い地域に住む人は、必要な栄養を野菜からとらざるをえませんでしたが、流通が発達し、新鮮な魚や肉が簡単に手に入るようになった今でも、食卓に野菜が並ぶ食生活が続いているのでしょう」(前出の厚労省担当記者)

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