ただ両者とも、毛並みの良さでは折り紙付き。安倍首相が岸信介元首相、麻生氏が吉田茂元首相を祖父に持つ政界のサラブレッドだ。「ウマも合うんでしょうね。1993年に安倍さんが衆院に初当選して以来、派閥こそ違うものの、20年以上の長きにわたって、交流が続いています」(前同)
しかも、安倍首相と麻生氏は親戚同士。麻生氏の祖父である吉田茂元首相の娘を通じて、麻生家と安倍家はつながっているのだ。「舌鋒鋭いガキ大将タイプの麻生さんは、敵を作りやすい。片や安倍さんはおっとりしたお坊ちゃま気質で、人に合わせることが得意。その意味で言うと、永田町広しといえども、“安倍・麻生”に勝るコンビはいませんよ」(同)
政治評論家の有馬晴海氏が続ける。「麻生氏は06年の自民党総裁選に立候補しますが、当時、官房長官だった安倍氏に敗れました。ところが、第1次安倍政権で麻生氏は全面協力を約束し、引き続き外務大臣を務めました。このとき、2人の関係がより深まったと言えます」
第1次安倍政権を契機に固い契りを交わした両者。その後、麻生氏が08年の総裁選に勝利し、麻生政権が発足。ただ、1年で民主党(現・民進党)に政権を奪われることとなる。「第1次安倍政権も1年で退陣に追い込まれていますから、政権運営に苦労したという意味でも両者の境遇が似ています。このことが、より親近感を抱かせているんでしょう」(前同)
そして迎えた12年の党総裁選。ここで安倍首相は、戦前の下馬評を覆して総裁に返り咲き、その後、第2次安倍政権を発足させるが、このとき麻生氏は、高村正彦氏(現・副総裁、現在は麻生派に合流)とともに安倍支持に回っている。以来、麻生氏は4年半の長きにわたり、安倍政権を支え続けてきた。その2人の蜜月関係が崩れたのは、昨年10月のこと。鳩山邦夫衆院議員の急逝に伴う、福岡6区の補選だったという。
「麻生氏は日本獣医師会会長・蔵内勇夫氏(福岡県議)の長男を推し、一方、菅官房長官は邦夫氏の弔い合戦を掲げる次男の二郎氏の応援に入り、自民党の分裂選挙となりました。結果は、トリプルスコアの大差をつけて二郎氏が圧勝。麻生氏はここで、菅官房長官はもちろん、自分の味方をしてくれなかった安倍首相に不信感を抱いたんですよ」(事情通)