最近、食事中むせたり、飲み物が誤って気管に入ることが多くて……そんな人は要注意! 軽く考えると、死の危険も!!
食事中にうまく飲み込めなくてむせたり、飲み物を飲もうとしたら気管に入って、苦しい思いをしたことは誰にでもあるのでは? だが、この日常的な現象が、危険なことに気づいていない人は多い。気管に物が詰まれば窒息死することもありうるが、最近、何よりも怖いと言われるのが「肺炎」である。
近年、我が国では肺炎が死因で亡くなる人が急増。日本人全体の死因は長らく、第1位=がん、2位=心臓疾患、3位=脳血管性疾患となっていたが、2011年からは脳血管性疾患に代わって、肺炎が3位にランクインしているのだ。
医療ジャーナリストは、こう言う。「肺炎の中でも最大の脅威なのが、誤嚥(ごえん)性肺炎です。厚労省は年齢別の調査で、90歳以上の男性の死因で肺炎を1位としていますが、70歳以上の人で肺炎にかかる人の7割以上が、誤嚥性だといわれています。また、医師や研究機関によっては、65歳以上、あるいは70歳以上の人の死因第1位が、この誤嚥性肺炎であるとすることも多く、高齢者にとっては、とても危険な病気なのです」
この誤嚥性肺炎、なんと死亡者の95%以上が65歳以上だという。また、なぜか女性より男性の患者が多いのが特徴だ。新潟大学名誉教授で、現在、東京都内の介護老人保健施設の主治医を務め、多くの誤嚥性肺炎患者を診ている岡田正彦(医学博士)氏は「誤嚥性肺炎になる方が増えたのは、高齢化が主な原因です」と話し、メカニズムをこう解説する。
「口に入れた食事は、ノドから食道を通り、胃に送られるわけですが、ノドの先には胃だけでなく、肺への通路、気管もあります。食べ物を飲み込む際、通常は気管に入らないように喉頭蓋という部分が蓋の働きをして閉じられるのです。ところが、老化に伴って閉じるタイミング(反射神経)を調節する神経や飲み込む力そのものが衰えた結果、飲食物や唾液が誤って気管に入ってしまうのです。その際、飲食物や唾液に含まれている細菌や胃酸が肺に入り感染、炎症を起こす。その結果、誤嚥性肺炎になります」
つまり、うまく飲み込めないことで、通常は無菌状態にある肺を、さまざまな細菌にさらすことになってしまうというのだ。そして、細菌は肺の中で増殖。肺細胞を壊し、結果、死に至るという。『宮元通りクリニック』(東京都大田区)の渡会敏之院長は、こう付け加える。「一般の肺炎になると通常、高熱、咳をする、痰が出るなど、特有の症状が見られます。しかし、誤嚥性肺炎の場合はそうした顕著な症状がまず見られず、軽いカゼだと思って放置して、気づいたときには手遅れということが多いのです」