■「七夕」の風習

 七夕といえば、願いごとの書かれた短冊やさまざまな飾りを笹につるすのが恒例で、夏の風物詩になっている。

●短冊文化は江戸時代にはじまった

 こういった取り組みがはじまったのは江戸時代のことで、サトイモの葉の夜露を使って墨をすり、そうしてできた墨を使い、手習いごとの上達を祈る旨をつづるというスタイルが主流だった。その当時は、書道や手芸などの手習いごとを習う大人、寺子屋で読み書きを学ぶ子どもが増えてきたころで、自分の上達を夜空の星に祈っていたのである。

 とはいえ、現代の七夕では、「ディズニーランドに行けますように」「犬が買えますように」「お金が貯まりますように」などといった物欲、「家族がみんな仲良く健康に過ごせますように」「火事や災害に遭いませんように」「Mくんと結ばれますように」といった日常生活や恋愛面での願望が書かれた短冊も少なくない。

●五色の短冊

 七夕では、色とりどりの短冊に、願いごと、「天の川」「織姫」「彦星」などといった七夕に関連する言葉が書き込まれる。中でも、「青・赤・黄・白・黒」の「五色」(ごしき)の短冊を使うことには意味がある。

 青・赤・黄・白・黒の五色は、中国の陰陽五行説にちなんでおり、それぞれの色は以下を現す。

・青……木
・赤……火
・黄……土
・白……金
・黒……水

 とはいえ、現在の短冊は実にカラーバリエーションが豊富で、ピンク、オレンジ、黄緑、水色、紫などの短冊も盛んに流通していることもあって、「五色の短冊」を意識している人は少数派である。ちなみに、中国では「五色の短冊」ではなく、「五色の糸」が使われている。

■笹の葉に飾られる飾りにも意味がある

 笹の葉には短冊以外にもさまざまな飾りが施されるが、それらにもひとつひとつ意味が込められているので、紹介したい。

●折り鶴

 長寿を願って飾る。千羽鶴が飾られるケースもある。

●網飾り

 畳んだ折り紙に、交互にハサミで切れ目を入れて作る。魚を捕獲する際に使用される網がモデル。大漁や豊作を願って飾る。

●吹き流し

 織姫が織る糸をイメージしている。くす玉や紙風船に適当な長さにカットした紙テープを貼って垂らす。この紙テープを五色にしておけば魔除けの意味にもなる。

●神衣(かみこ)

 折り紙などで折られた着物を着たお人形。神衣を笹に飾ることによって、病気などの災いを人形に移すことによって無事に過ごせるといわれている。また、裁縫が上手になって着るものに困ることがなくなる、ともいわれている。

●財布

 折り紙で巾着タイプの財布を折ったり、あるいは本物の財布を笹に飾るケースもある。いずれも、金運アップを祈る。

●くずかご

 上記のような七夕飾りを作る際に出た紙くずをまとめ、折り紙で作った籠の中に入れる。これは、物を粗末にせず大切にするという意味が込められている。

 笹の葉や短冊などの七夕飾りは、翌日には取り外すことになっている。昔はこれらをすべて、川に流して清めるというしきたりも存在していたが、今は環境への配慮から川に流すのではなく、飾りを小さく切って可燃ごみの日に出すのがベターとなっている。ごみに出すのはさすがにちょっと抵抗がある、という場合は、近所の神社や寺院でお焚き上げをしてもらうという方法もある。

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