安室奈美恵はアイドル歌手にとってのタブー「でこ出し」を果敢に行なったライブアイドルだった 平成アイドル水滸伝 第6回 安室奈美恵と欅坂46の巻~ライブと平成女性アイドル【前編】の画像
※画像は安室奈美恵 with SUPER MONKEY'Sのシングル『TRY ME 〜私を信じて〜』

平成アイドル水滸伝~宮沢りえから欅坂46まで~
第6回 安室奈美恵と欅坂46の巻~ライブと平成女性アイドル【前編】

おでこと前髪

 昭和の女性アイドルにとって前髪は命だった。『野菊の墓』で映画初主演となった松田聖子が日本髪にしなければならず、それまで「聖子ちゃんカット」で死守していたおでこを全開にしたときは、いま思えば不思議なほどネタにされ、話題にもなった。

 「前髪命」の理由、それはそのほうがかわいいからというのもあるが、恥ずかしいからというのもきっとあるだろう。芸能人に限らず思春期を迎えた女子に共通する“乙女心”のなせる業。大げさに言えば、おでこを出すことは自分の裸を見られるのと同じような感覚なのかもしれない。

 平成になっても、アイドルの「前髪命」はあまり変わっていないようにも見える。AKBグループにせよ坂道シリーズにせよ、前髪をきっちりつくっているメンバーは多い。アイドルにとって「でこ出し」は、いまも少なからずリスキーなのだ。

 しかし、例外というには大きすぎる存在もいる。安室奈美恵である。

 1990年代半ば、すい星のように登場して以来、現在に至るまで彼女は基本「でこ出し」だ。髪型のバリエーション自体は豊かだが、いずれにしてもおでこを全開にして彼女はライブで歌い、そして踊る。そこだけ見て判断するわけにもいかないが、そんなところにも類型的なアイドルとは一線を画す彼女の立ち位置が表れていると言うべきだろうか。

 一方、前髪がこれまでとは違う感じでこちらにぐいぐい迫ってくるようなアイドルも登場した。欅坂46のセンターを務める平手友梨奈である。

 存在感あふれるパフォーマンスやエッジの効いた発言が話題になる彼女だが、ライブの際に激しく動くその前髪は、恥ずかしさを隠す防御のためのものではなく、見ているこちらを攻撃するための武器のようだ。そこにもやはり、アイドルでありながらアイドルを超えるような何かを感じてしまう。

 テレビなどとは違うライブ。そこにはいったいなにがあるのだろうか? 今回は、この2組を通してライブと平成女性アイドルの関係について探ってみたい。

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