元WBC世界バンタム級王者・山中慎介×人気格闘漫画『バキ』シリーズ作者・板垣恵介
元WBC世界バンタム級王者・山中慎介×人気格闘漫画『バキ』シリーズ作者・板垣恵介

 世界王者に輝いた元プロボクサー・山中慎介と、“最強”を描き続けてきた漫画家・板垣恵介。フィールドは違えど、強さと向き合ってきた漢(オトコ)2人が、格闘談義から人生論まで語り尽くす!

山中 そういえば、板垣先生と対談するのは初めてですよね。

板垣 そうだなあ。これまでは個人的なつきあいの中で、飯を食ったりしてきたけど。でもね、俺は実際に会う前から、ボクサーとしての山中選手には注目していたんだよ。

山中 そうなんですか!?

板垣 俺が初めて山中選手を知ったのは、ビック・ダルチニアン(オーストラリアのプロボクサー。元世界2階級制覇王者でWBC世界バンタム級4位。山中選手は2012年4月6日に対戦し、判定勝ち。WBC世界バンタム級王座初防衛に成功)との試合がきっかけでさ。このビック・ダルチニアンってのは、抜群に強い選手だったから、対戦相手が日本人だって聞いて“ああ、こりゃ惨劇だ……、かわいそうに”なんて思ったの。で、俺はその試合、見なかったんだよね。日本人が負けるの見たくないし。結果を聞いて、びっくり。日本人が勝ったって。で、“誰だ、その男は!?”ってなったんだよ。

山中 そうだったんですね。

板垣 そのあとにロハス(トマス・ロハス メキシコのプロボクサー。元WBC世界スーパーフライ級王者でWBC世界バンタム級7位。山中選手は12年11月3日に対戦し、7回36秒KO勝ち。2度目の防衛に成功する)との試合。すごかった。KOしたときの相手の倒れ方を見て、びっくりしたよ。つま先に顔から落ちるんだもの。あんな無慈悲なKO、10年に1回見られるかどうか……。

山中 手応えはなかったけど、倒れ方を見て決まったな、と。

板垣 そのときの山中選手が、カッコ良くてね。倒れた相手をチラッと見るだけ。助け起こすとかしないんだ。

山中 その頃は、まだ自分も今よりギラついていたときでしたから(笑)。

板垣 その後かな、実際に山中選手と会ったのは。電撃ネットワークの南部さんが参加していたV3のパーティで、電話つないでもらって……。

山中 その後すぐに食事をご一緒させていただいたんですよね。『グラップラー刃牙』から読んでいたので、その作者の方と食事できるのは、すごいことですよ。

板垣 俺もね、山中選手と会ってみたかったから。だってビック・ダルチニアンと闘ったときは判定勝ちだったけど、最後まで倒しに行きたがっていたっていうじゃない。なんてハートの強い選手だって思ってさ。

山中 そこで倒せなかった後悔は、その後の試合に生きましたね。ツニャカオ(マルコム・ツニャカオ フィリピンのプロボクサー。元WBC世界フライ級王者でWBC世界バンタム級1位。山中選手は13年4月8日に対戦し、12回TKO勝ちで3度目の防衛に成功する)の試合でも、あの経験があったからこそ、KOできたんです。

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