平成日本の心象風景を象徴する映画の中の宮崎あおい 平成アイドル水滸伝 第7回 宮崎あおいと広瀬すずの巻~映画と平成女性アイドル【前編】の画像
平成日本の心象風景を象徴する映画の中の宮崎あおい 平成アイドル水滸伝 第7回 宮崎あおいと広瀬すずの巻~映画と平成女性アイドル【前編】の画像

平成アイドル水滸伝~宮沢りえから欅坂46まで~
第7回 宮崎あおいと広瀬すずの巻~映画と平成女性アイドル【前編】

少女漫画のヒロイン

 アイドルは、現実とフィクションのあいだを生きている。だからフィクションの世界を演じるにはうってつけの存在だ。

 昭和の女性アイドルの映画は、小説原作のパターンが多かった。山口百恵は『伊豆の踊子』、松田聖子は前回も触れたが『野菊の墓』と、それぞれ極めつきの文芸映画に主演している。

 また映画がメインの昭和の女性アイドルと言えば、薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の「角川3人娘」が思い浮かぶ。彼女たちの映画デビュー作『野性の証明』『時をかける少女』『晴れ、ときどき殺人』もすべて小説原作だ。その背景には、角川書店が出版する小説を原作にして相乗効果を狙う角川映画得意のメディアミックスがあった。

 一方、昭和にも漫画原作の映画がなかったわけではない。薬師丸ひろ子の初主演作は、同名漫画が原作の『翔んだカップル』である。ただしこれは、少年漫画だった。

 そのなかで異彩を放ったのは小泉今日子だろう。初主演映画『生徒諸君!』の原作は、庄司陽子による当時人気の同名少女漫画。彼女の役柄は、ソフトボールに打ち込む明るく活発な高校生。ショートカットにしてブレークしたキョンキョンにはぴったりで、病弱の双子の姉との二役という味つけも効いていた。

 平成は、一転少女漫画原作というケースが主流になった印象がある。ライトノベルなどの台頭はあるものの、小説から漫画へとフィクションのトレンドが変わったのだろう。

 また少女漫画の世界も作品の幅が広がり、主人公はかわいくて純情というようなステレオタイプ一辺倒ではなくなった。少女漫画の多様化は女性アイドル映画の多様化にもつながり、そこから頭角を現す若手女優も多彩になる。かくして平成は、若手女優百花繚乱の時代になった。

 というわけで今回は、映画で少女漫画のヒロインを演じる若手女優にスポットを当ててみたい。メインになるのは、宮崎あおいと広瀬すず。そこには平成、特に21世紀の日本がアイドルという存在をなぜ必要とするのか、その理由の一端も見えてくるはずだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3