「部活女子もの」というトレンド

 若手女優が“成長物語”を演じるジャンルとして、21世紀に入り活気づいたのが「部活女子もの」である。

 高校の吹奏楽部での出会いをきっかけにビッグジャズバンドで女子高生が奮闘する様子を描いた2004年公開の『スウィングガールズ』などは、そのはしりだろう。上野樹里をはじめとして、貫地谷しほり、本仮屋ユイカなど多くの若手女優が出演した。「部活女子もの」は、若手女優の登竜門にもなっている。

 また厳密には違うかもしれないが、常磐ハワイアンセンターのフラダンスチームの実話をベースにした『フラガール』(2006年公開)もある。主要人物の一人に扮し注目された蒼井優は1985年生まれで宮崎あおいと同い年。実は『害虫』でサチ子に親身になる同級生を演じたのがほかならぬ蒼井だった。

 そして広瀬すずは、いまや「部活女子もの」の中心的存在だ。チアリーダー部を舞台にした『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年公開)もそうだが、三部作が今年完結した『ちはやふる』(シリーズ第1作は2016年公開)がこのジャンルでの目下の代表作だろう。

 いうまでもなく原作は、末次由紀のベストセラー同名少女漫画。広瀬すず扮する主人公の綾瀬千早は幼い頃から百人一首に魅せられ、入学した高校で競技かるた部を設立する。そして集まった仲間の部員たちとともに全国一を目指す。

 まさに王道の青春映画と言っていい。競技かるたのルールや魅力を手際よく説明しながら、最強のライバルの松岡茉優、幼なじみの野村周平と新田真剣佑、部員仲間の上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希らがテンポよく物語に絡む。そしてクライマックスになる試合の緊迫感あふれる展開。見ていて飽きさせないとはこのことだろう。

 昭和には、似たジャンルとして「スポ根もの」があった。『巨人の星』や『柔道一直線』、女性が主人公のものだと『アタックNo.1』や『サインはV』などがあった。主人公が並外れた努力と根性によってライバルに打ち勝つパターンの物語だ。

 『ちはやふる』にも、そうしたスポ根的なところはある。ただし、話の主眼はライバルに対する勝利ではない。『海街diary』のすずや『anone』のハリカがそうだったように、自分自身の居場所の発見である。高校の競技かるたは団体戦がメイン。チームの勝利がまずあり、そのなかでライバルとの個人的な勝負がある。チームの仲間とのあいだに培われた信頼関係、「一人じゃないこと」を実感するとき、千早は競技者個人としても覚醒していく。ここでもまず関係性の構築が根底にあるのだ。

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