■胃がんや肝臓がんの特徴は?

 がんの部位別罹患率でも、地域によって特徴が出ている。胃がんの罹患率は、新潟、秋田、山形、富山、鳥取と日本海側の県で高い。『みつばちクリニック』(大阪府)の橋本惠代表(医学博士)は「データが均一に収集されているかどうかには疑問がありますが」と断ったうえで、日本海側の胃がん罹患率が高い理由を、次のように説明する。

「東北や日本海側は冬が長くて雪が多いこともあり、塩蔵文化が今も残っています。こうした食文化による塩分の摂取過多が胃がん罹患率を助長している可能性があると思います」

 胃がんの主因はピロリ菌とされるが、塩分を多くとると胃に炎症ができやすく、ピロリ菌を持っている場合、その活動を助長することで、胃がんが発生しやすくなるといわれる。しょっぱいものを食べ過ぎないことが、胃がんのリスクを下げるためにも大切なようだ。

 また、今回の調査では、肝臓がんの罹患率にも地域特性が出ている。肝臓といえば酒。きっと酒量が多い県――たとえば、日本酒の飲酒量日本一の新潟県などが高いと思われるかもしれないが、実は長崎、愛媛、滋賀、高知など関西に集中しているのである。橋本博士は、こう話す。

「日本全体でみて、肝がんは西高東低の傾向が以前から指摘されています。とりわけ佐賀県では死亡率が、1999年から2017年まで、19年もワースト1位です」

 では、その要因はどこにあるのか。前出の松田室長によると、「肝がんの原因は、飲み過ぎというより、C型肝炎ウイルスの感染が大きいと考えています」というのだ。C型肝炎ウイルスは血液を通して感染し、30年ぐらいかけてがんを進行させる。

「関西地方に肝臓がん罹患者が多いのは、かつて問題になった血液製剤や注射針の使い回しなどが原因かもしれない」と松田室長は推測している。そのため、肝がんを防ぐには、まず肝炎ウイルスの検査が先決と言えよう。

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