■ジャイアンツは菅野智之の存在が大きい

――今季、大型補強で、さらに強化されたジャイアンツの巨大戦力。ただ、野村氏は、チームが勝つためには、選手層の厚さ以外に必要なものがあると語る。

野村「中心なき組織は機能しない」という言葉があるように、チームには中心的存在が必要。その点、菅野(智之)のような絶対的なエースがいるのは、今の巨人にとって、とても大きいだろうね。菅野は、野球の本質に一番近づいているピッチャー。頭を使って野球をしているし、ピッチングの鍵はコントロールと配球だということを熟知している。

 攻撃面の中心としては、4番の岡本(和真)はまだ若すぎるかな。V9時代のONがそうだったように、4番というのはチームの模範となるべき選手。かつてONがチームの鑑としてチームを引っ張ったように、監督が「おまえら、ONを見習え」と言えるくらいになってこそ、本物なんだよ。菅野が絶対的エースと言ったけど、それは勝ち星の数の問題じゃないんだ。今の菅野なら、監督は他の投手に「菅野を見習え」と言える。それこそが“真のエース”なんだ。岡本もそんな選手になれるのか、注目だね。

 そういえば、巨人には岩隈(久志)も入ったね。岩隈は、俺が楽天の監督をしていたときの“エース”だったけど、いつも物足りなさを感じていたよ。彼は自分の限界を決めているのか、たとえ好投をしていても、100球を超えると、あっさり降板を申し出る。チームのことは考えていない。無理して投げて、故障でもしたら損という発想なんだよ。

 でも、シーズン中には、決して負けられない一戦というのが必ずある。そういう試合に投げることを意気に感じて、マウンドに上がったら最後まで投げ切る。それが“エース”なんだ。

 その点、田中将大は岩隈とは正反対。そんなことは絶対に言わなかったな。楽天が日本一になった2013年、田中は先発で24連勝。日本シリーズでは抑えとしても投げて、胴上げ投手になっている。それがすべて証明しているんじゃないかな。岩隈のピッチングを日本で見るのは8年ぶりになるけど、彼の意識がどうなっているのか、気になるところだね。

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