だが現実の学校はそうはいかない。どんな悩みや問題も単純ではなく、複雑だ。そう簡単に解決策は見つからない。だから学校を舞台にしたドラマは「学校ドラマ」ではなく「学園ドラマ」にならざるを得ない。

 その“常識”に敢然と挑戦したのが、1979年に始まった『3年B組金八先生』(TBS系)(以下、『金八先生』と表記)だった。武田鉄矢が担任を務める中学3年生のクラスを描いたこのドラマは、「学校ドラマ」と言ってもいい側面を持つ初の学園ドラマだったと言っていい。

 このドラマでは、学園ドラマと違ってクラスの生徒は「メインキャラ」と「その他大勢」に分かれていない。生徒一人ひとりに受験、家庭、友人、恋愛などそれぞれの悩みがあり、人知れず苦しんでいる。ドラマも毎回、クラス一人ひとりが順番にメインになっていた。そこには同年代の視聴者が共感できるリアルな中学生がいた。

 そうした描き方は、生徒たちをアイドルのような存在にした。前にもこの連載で書いたように、アイドルとはプロセスを見せる存在だからだ。3年B組の生徒もアイドルもともに、悩みながら成長していく。その意味では、3年B組というクラスがひとつのアイドルグループのようなものでもあった。実際、このドラマからは、たのきんトリオ(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)、三原順子(現・三原じゅん子)、伊藤つかさなどアイドルが続々生まれた。

 だが一方で、平成に入り学園ドラマは下火になっているように見える。ヒット作がないわけではないのだが、昭和ほど勢いがある感じでもない。特に学園ドラマからアイドルが生まれるパターンは、近年あまり目立たない。

 なにかが変わったのだろうか? そこで今回は、学校と平成女性アイドルの関係を考えてみたい。メインとして登場してもらうのは、上戸彩と乃木坂46である。

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