白石和彌
白石和彌

 故・阿佐田哲也が遺した不朽の名作『麻雀放浪記』。本誌では現在、同作を原作とした劇画を連載中だが、4月5日、同作を原案とした映画『麻雀放浪記2020』(東映)が公開。84年公開の和田誠監督版『麻雀放浪記』で真田広之が演じた主人公“坊や哲”を演じるのは、斎藤工。和田版の舞台である1945年から2020年にタイムスリップするという奇抜な設定に注目が集まっていた。

 しかし――。3月12日、主要出演者のピエール瀧が逮捕されたことにより、作品は製作陣の意図せぬ方向で注目されることとなったのだ。監督の白石和彌氏に話を聞いた。

■斎藤工主演の映画『麻雀放浪記2020』をノーカットで公開

 逮捕後、ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK)や、続編公開が決定している声優を務めたアニメ『アナと雪の女王』をはじめ、多くの出演作からピエール瀧の名前が消される中、『麻雀〜』の決断は一線を画した。20日、東映の多田憲之社長と白石氏が会見を行い、出演シーンノーカットのうえ、予定通り公開することを発表したのだ。

――会見での、「議論の余地なく、社会の流れで“公開中止”が決まっているかのように、作品にフタをしてしまうのはよくないんじゃないかと思います。公開できないというのは、あくまで特例であってほしい」との言葉が印象的でした。

白石和彌氏(以下、白石)こうした形で記者会見を行うのは本意ではありませんでしたが、そういうことを発信するタイミングだったのかもしれません。今までの“くさいものにフタをする”という風潮に、疑問がありましたからね。

――監督はかねてから、「いいことをする奴も悪いことをする奴も、みんなまとめて、それはそれで人間」とおっしゃっていましたが、それが今回の騒動をめぐる事象に通じるのではないかと感じました。

白石 人間って、一面的ではないと思うんですよ。午前中に母親を殺して逃げて、午後は困っている老人を、ふと助けちゃったりするのが“人間”だと思っているので、そうした一面的ではないことを描いていきたいと、常々思っています。

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