■川をせき止めた野湯で自然を体感

 群馬県には、川をせき止めて造られた野湯「尻焼温泉・川の湯大露天風呂」がある。JR吾妻線の長野原草津口駅を下車し、バスで〈花敷温泉〉まで行けば、徒歩10分で到着する。「かつて“川に座り、高温で湧き出る温泉で痔を治療”した人がいたことから、“尻焼”の名がついたとか。そうした湯治目的の客から、河原でBBQを楽しみながら水着で入る若者まで、楽しみ方はさまざま。川底は高低差があったりコケでヌルヌルしていたりで、心ゆくまで自然を体感できます」(ルポライター)

 新潟県の山深い秘境にも、混浴露天風呂がある。なんと令和にして電気が通っておらず、テレビもエアコンも置いていない「駒の湯温泉  駒の湯山荘」の日帰り湯だ。その道のりもまた一筋縄ではいかない。JR上越線の小出駅を下車、バスで〈大湯温泉〉へ。そこから徒歩1時間でたどり着く。「日帰り入湯料は500円ですが、湯がまるで噴水のように噴き出していて、贅沢な気分が味わえます。また、適度なぬる湯のため、掛け流しの音と川のせせらぎをBGMに、いつまででもつかっていられますね」(前出のカメラマン)

 名湯が点在する岐阜県の奥飛騨温泉郷にある新穂高温泉は、上高地など避暑地として有名だが、混浴温泉にも足を向けたい。「JR松本駅から新穂高温泉行き特急バスに乗り、〈国立公園駅〉を下車すると、すぐにあるのが『宝山荘別館』。日帰り500円で混浴露天風呂に入れます。あたりは静かで、近くの蒲田川の音や、周辺の木々の葉がこすれあう音さえ聞こえ、風情たっぷりです」(前同)

 自治体の条例により、混浴温泉が少ない近畿地方の中でも唯一、混浴が点在するのが和歌山県である。中でも、一風変わった野湯「井関温泉 たらいの湯」は、好奇心がうずくはず。

「JR紀州本線の那智駅からバスに乗り〈井関〉で下車、民家の間や田んぼのあぜ道を進むと、竹のかけひから源泉が掛け流されている2つのたらいがあるのですが、実はこれが浴槽代わり。“ここが温泉!?”と驚きますが、ふだんは付近の住人が利用している生活用水なので、観光で訪れる際は、入湯していいか住民に許可を取ることをオススメします」(秘湯マニア)

 また、こうした野湯には他にも留意点がある。前出の蜜月氏が言う。「主に野湯は、人けのない場所にあることが多く、“獣がいるのでは”と緊張することも。それはそれで刺激的で楽しいですが……」

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