■在職老齢年金の見直しにも要注意

 年金に関してはもう一つ、政府が進めている「在職老齢年金の見直し」にも大きな注意点がある。在職老齢年金とは、働きながら年金を受給している高齢者の年金額がカットされる制度のことだ。「つまり、現行の制度では、働きながら年金をもらう人は、働けば働くほど年金がカットされることになり、働く意欲が損なわれかねないんです」(年金問題に詳しいファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏)

 ただ、これでは、国民にはできるだけ働いてもらい、老後はそれぞれに頑張ってもらおうという政府の目論見が崩れてしまう。そこで政府は現行の制度を見直すことを検討。年金カットの基準となる収入額を引き上げ、年金が減らないように動いている。「ただ、65歳以上で年金と給与を合わせて、月62万円を稼げるのは経営者や会社役員くらい。多くの国民は関係ありません。逆に、高所得者層にとってはカットされる年金額が縮小される結果となり、金持ち優遇政策とも言えます」(長尾氏)

 加えて、政府はさらなる悪だくみをしているという。「昭和30年代、男性の平均寿命が65歳だった時代には、定年は55歳でした。つまり、退職後の10年が老後という考え方です。それが、今では定年が60歳(65歳まで再雇用あり)で5年延びたのに比べ、平均寿命は80歳と15年延びました」(前同)

 つまり「退職後の10年が老後」を基準に考えると、年金の受給開始年齢はあと5年遅らせることができる。「今後、10年以内に受給年齢が70歳へ変更される可能性は否めません」(同)

 しかも、年金の給付水準は低下の一途をたどるという。政府は「現役世代の手取り収入の5割死守」を明言しているが、どうやら裏切られることになりそうだ。「現在の年金給付水準は約6割。つまり年金受給者は、働いている世代(現役世代)の平均年収(手取り収入額)の6割分の年金を受け取っています」(経済ライター)

 ところが、仮に年金受給開始年齢が70歳へ変更されなくとも、現在40歳の人が65歳に達する25年後には、「給付水準が4割以下、その時の現役世代の35%〜37%に低下している恐れがある」(前同)というのだ。

 さらに、物価や賃金上昇時に年金受給額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」の活用の他、「パートで働く主婦を厚生年金に加入させ、主婦から掛け金を巻き上げようとしている」(野党議員)という動きまである。

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