■豊臣秀吉は虎の塩漬け肉を

 動物性タンパク質でいうと、やはり牛肉。南蛮人宣教師ルイス・フロイスが、こう書き残している。〈私たち(西洋人)の食物も、彼ら(日本人)の間ではとても望まれている。とりわけ、日本人が嫌悪してきた卵や牛肉がそうなのです。太閤様(豊臣秀吉)まで、それらの食物をとても好んでいます〉

 戦国時代、南蛮貿易が盛んになるにつれ、牛肉を食べる習慣が日本に根づいたのだ。「秀吉は天正15年(1587年)にバテレン追放令を発し、キリシタンを弾圧すると同時に、牛馬の売買や食事を禁止したが、それ以前より、猪や鹿などの肉を食べる文化は普及していました」(前出の跡部氏)

 その秀吉はすごい。「秀吉は、朝鮮出兵した島津義弘から2頭分の虎の塩漬け肉を送ってもらっています」(前出の永山氏)

 秀吉ゆかりの“ビンビンめし”としては、強壮食材たっぷりの“太閤スープ”があるという。「材料は鶏がら、手羽、豚肉、豚あばら、ニンニク、しょうが、シイタケ、リンゴ、カツオ節、クコの実などです」(前同)

 漢方に詳しい薬剤師の平地治美氏は「クコの実は目や肝臓によいとされます」という。戦国武将たちは、ただやみくもに動物性タンパク質をとるだけでなく、意外や意外、幅広く健康食材をとっていたのだ。「秀吉は子どもの頃、よくドジョウを食べていました。そこに含まれるトリプトファンは、脳内物質セロトニンの分泌を盛んにします。これは別名“幸せホルモン”。秀吉の底抜けの明るさは、この成分によるものと思われます」(永山氏)

 秀吉には、のちに信長の側室となる女性に近づき、いつも冗談を言って笑わせていた。これが、信長への仕官につながったという逸話も残る。女にモテる秘訣は、ドジョウにあるのかも。さらに秀吉は、肉と同じく強壮作用のあるタコ、イカを好んだという。「秀吉はその生涯において、何度か“奇策”と言える作戦を実行していますが、その発想を助けたのが、タコやイカではないでしょうか。タコやイカにはタウリンやグルタミン酸が豊富に含まれ、脳の老化を防いでくれます。タウリンは、現在市販されている多くの栄養ドリンクにも含まれており、疲労回復のほか、血圧を安定させ、心臓を丈夫にしてくれるんです」(前同)

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