乃木坂46『サヨナラの意味』
※画像は乃木坂46『サヨナラの意味』より

乃木坂46「個人PVという実験場」

第5回 乃木坂46のドラマ作品を担う柳沢翔 3/4

■個人PVの進化系としての『乃木坂シネマズ』

 乃木坂46は2019年末、新たな映像コンテンツの制作を発表する。FODオリジナルドラマとして12月25日から配信が開始された、『乃木坂シネマズ~STORY OF 46』がそれである。

 2020年に入りフジテレビで地上波放送も行なわれたこの『乃木坂シネマズ』は、乃木坂46がデビュー以来個人PVやMVなどで蓄積してきた、俳優を育む組織としての歴史を受け継ぐ企画である。

 全10話のオムニバスドラマで構成される『乃木坂シネマズ』は、1話ごとに1人の乃木坂46メンバーが主演を務め、毎回異なる映像作家を監督に招く。個人PVの形式を踏襲するような性格をもつこの企画の、第1話の監督に起用されたのが柳沢翔だった。

 前回(/articles/-/73163)、前々回(/articles/-/73162)と、乃木坂46のフィルモグラフィーの中で柳沢翔監督作品が、互いに異質な他者同士が対峙するさまを描き出してきたことにふれた。『乃木坂シネマズ』における柳沢監督作である、齋藤飛鳥主演「鳥,貴族」にもまたその志向はうかがえる。とりわけ、異種族間の葛藤や不均衡な関係が描かれる今作は、2016年の「サヨナラの意味」MVと通じるテーマ性をもっている。

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