■萩原健一と電話で罵り合い

 さて、今回初DVD化された追悼ライブだが、気になるのは、“なぜ30年間も封印されていたのか?”という点である。「当時、テレビ中継のお話もお断りしましたし、劇場での上映、DVD化の話も僕が止めていたんです。“その場にいた人たちの記憶にだけ残ればいい”とツッパっていたんですね」

 そんな崔監督の心を変えたもの、それは30年という時間だった。「僕も、あのときに関わった者たちも、30年前よりは死に近づいているわけです。今は“記憶に残ればいい”というカッコよさを貫くことより、“カッコ悪くても記録に残すことのほうが大切なんじゃないか”と思うようになったんです」

 今回のDVDは2枚組で、もう1枚のディスクには、崔監督が手掛けたドキュメンタリー映像を収録。その中では、水谷豊桃井かおりも優作さんについて語っているが、特に興味深いのが、2人とも萩原健一さん(享年68)について触れていることだ。比較されることも多かった優作さんとショーケンの違いを監督はこう見ていた。

「ショーケンは時代を引き寄せることに興味がなかったと思うんです。自分の世界の中で好きなように、前に行けばいいって考えていた。その点、時代と向き合う客観性は優作のほうがあったと思いますね」

 最後まで共演することがなかった2人に、実際の接点はあったのだろうか。「2人が一緒にいる場に立ち会ったことは、一度もないです。ただ、電話でお互いを罵り合っている場面は見たことがあります。家に飲みに行ったときに、酔った優作が“ショーケンを呼ぶ”って言い出したことがあったんです。僕は“やめとけよ”って止めたんですが、それでも優作は電話をかけて“今から来い”と。でも、ショーケンは断った。すると、だんだん優作の言葉が荒くなって、言い争いが始まったんです。そのとき、内田裕也さん(享年79)もいたんですが、あの裕也さんが困った顔をしていましたからね」

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4