■”特定少数”でコロナ対策
だからといって道場を完全に閉める気はなかった。営業時間を午後8時までと短縮する形で開けている。
「(健康増進や親子コミュニケーションなどの)クラスはやっていません。節度を守りながらの自主トレが中心になっていますね」
現在の練習は選手が中心。コロナ禍の直前にキックボクサーとしてデビューを果たした大倉萌や大道塾の新エースといわれる岩崎大河らが足繁く通う。
「1回の練習人数を3~4名程度に抑えるようにしています。みんな時間をズラして来ますね。物足りなさ? もちろん感じるけど、それはしょうがない」
練習は“特定少数” を貫く。
「大きなジムは不特定多数でやってるけど、ウチのような規模だとそうではない。だからミットもマス(スパーリング)もやっています」
新型コロナとの闘いは、長期戦になることを覚悟している。今春、大道塾は『全日本空道体力別選手権地区予選』など一切の大会を中止に。予選を行えないため、当初はオープン参加方式を検討していた『全日本空道体力別選手権大会』と『全日本空道シニア選抜選手権大会」(5月23~24日・仙台)も中止になってしまった。「体力別の中止は北斗旗の歴史の中で初めて」と驚きを隠さない。
「今年はギリシャでワールドカップを開催予定だった。いまのヨーロッパの状況を見ると、それも確実にないでしょう」
次の大会の開催日時がハッキリしないとなると、出場を予定していた選手のモチベーションの維持が難しくなってくる。飯村は「選手にとって練習は仕事のうち」と考えているので、最も腐心するところでもある。
「大道塾では公共の施設を使って練習しているところも結構あるので、近くの公園でやったりしているようです。プロも大変ですよ。試合の予定があっても、練習をやっていないジムもありますからね」
自身の健康管理には自信がある。その根拠は、最近始めた“鼻うがい”だ。
「鼻にたまるウイルスは喉の1万倍もあるらしい。でも、通常の手洗いやうがいとともに鼻うがいをしていると、仮に感染者と濃厚接触したとしても、ウイルスを洗い流せる(確率が高くなる)」
スキンヘッドの名伯楽は、仲間とともに通っていた吉祥寺や西荻窪のリーズナブルな居酒屋で熱い格闘談義ができる日が再び訪れることをじっと待つ。
(取材・文=布施鋼治)
ミット打ちはマスクを着けて
1968年東京都生まれ。空手家。国際空道連盟大道塾吉祥寺支部支部長。卓越した打撃テクニックで現役時代は“KOアーティスト”と呼ばれる1989年の北斗旗体力別中量級で初優勝、以降幾度となく表彰台の頂点に立つ。タイのラジャダムナンスタジアムにて、本場のムエタイにも果敢に挑戦。選手からの信頼も厚く、MMAなどジャンルを問わず多くの選手のミットを持つ。
https://kjj-dojo.jimdofree.com/
https://www.facebook.com/koji.fuse.7
1963年北海道生まれ。スポーツライター。レスリング、ムエタイなど格闘技全般を中心に執筆。最近は柔道、空手、テコンドーも積極的に取材。2008年に『吉田沙保里119連勝の方程式』(新潮社)でミズノ第19回スポーツライター賞優秀賞を受賞。他に『なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨』(双葉社)など。2019年より『格闘王誕生! ONE Championship』(テレビ東京)の解説を務めている。
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