■神武以来の天才

 加藤九段もまた、「神武以来(じんむこのかた)の天才」の異名を誇り、数多くの最年少記録を打ち立てた天才棋士だった。藤井棋聖が四段になったのは16年の14歳2か月だったのに対し、加藤九段は1954年に14歳7か月で四段となり、史上初の中学生棋士となった。その後、七段までの昇段最年少記録は、ほとんどが藤井棋聖が更新してきたが、五段の昇段だけは、加藤九段がいまだに“15歳3か月”で最年少記録を保持している(藤井棋聖は15歳6か月)。

「加藤九段は18歳3か月で八段に昇段しましたが、これもいまだに最年少記録。ちなみに九段昇段の最年少記録は、今回藤井棋聖と対局した渡辺2冠の21歳7か月。このままの勢いだと、どちらも藤井棋聖が更新するんじゃないでしょうか」(アマチュア棋士)

 最年少記録を更新し続けている藤井棋聖だが、一方の加藤九段は、62年10か月も将棋界の最前線で戦い続け、17年に現役最高齢記録を更新して引退した。これは、とんでもない記録だという。

「加藤九段は通算対局数2505で歴代1位を誇りますが、同時に歴代1位の通算1180敗を記録しています。将棋はトーナメント戦が主流のため、ただ負け続けていては、棋士としてやっていけない。第一線で戦ってきたからこそ、62年間も生き残り続けてこれたわけです。勝利数も1324勝で、歴代4位ですからね。加藤九段もレジェンドですよ」(前同)

 当時、藤井四段と加藤九段が対局した際に、加藤九段が突然カバンからチーズを取り出して食事をした件について、試合後に藤井四段は「斬新な新手筋ではないかと思いました」と話していたという。

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