■闘将星野のキャッチフレーズ

 選手、監督時代を通じて闘志をムキ出しで戦ったのが、故・星野仙一氏だ。その闘将星野のキャッチフレーズとなったのが、〈勝ちたいんや〉だろう。2002年に阪神の監督に就任した星野氏は、2年目のキャンプイン前日のミーティングで、「勝ちたいんや。ファンを喜ばせたいんや」と熱弁。これをチームスローガンとし、見事ペナント優勝を飾っている。

「星野さんは後年、テレビ番組で、“明石家さんまさんからもらった色紙に書かれていた言葉をヒントにした”と告白しています。そこに書いてあった言葉が“勝ちたいんや”だったんです。ただ、さんまさんによれば、これはゴルフでイカサマをした坂東英二さんをとがめたときに、坂東さんが逆ギレして叫んだ言葉だったとか(笑)」(スポーツ紙阪神担当記者)

 元は“珍言”だったのだ。

「星野さんは11年から4年間、楽天の監督も経験しています。13年には“負けないエース”田中将大の活躍もあり、監督として初の日本一を達成しましたが、裏話があるんです」(前同)

 日本シリーズは星野楽天と原巨人が激突し、白熱の戦いは3勝3敗で第7戦までもつれ込んだ。

「6戦目はエース田中が先発、完投するも惜敗。最終戦には田中を投入できないと思われたが、星野さんが田中に〈明日は無理やろな……〉と囁くと、これに発奮した田中は“やれます!”と即答。敗戦に打ちひしがれるエースの闘争心に、火をつけたんです」(同)

 第7戦は美馬学、則本昂大の継投で9回まで巨人打線をゼロ封。9回には、前日160球を投げた田中が抑えとして登場し、二死、一、二塁というピンチを招くも、代打の矢野謙次を三振にしとめ、楽天を勝利に導いている。星野氏の老獪なひと言が、楽天に初の日本一を呼び寄せたのだ。

 選手のやる気を引き出すという意味では、故・仰木彬監督も定評があった。埋もれていたオリックス時代のイチローを、仰木監督が見出したのは有名だ。

「前任の土井正三監督は、“あんな打ち方ではダメ”と使おうとしませんでしたが、仰木さんが監督になるや、スタメンに抜擢。イチローは大ブレイクしました。そのときの仰木監督の言葉が、〈どんな格好でもヒットを打てれば使うよ〉です」(スポーツ紙デスク)

 “仰木マジック”とも称された、球界屈指の名伯楽だった。

 イチローと並ぶ天才である落合博満氏。3度の三冠王に輝いた選手時代の至言が、〈ヒットはホームランの打ち損ない〉というもの。

「並みの打者なら“ヒットの延長がホームラン”と考えるが、落合は逆。ロッテ時代には〈全打席、全球バックスクリーンを狙っていた〉というから、モノが違いますよ」(球界OB)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4