久保史緒里「乃木坂46のファンだった少女」が自身の個人PVを持つことの意味【乃木坂46「個人PVという実験場」第8回 1/4】の画像
※久保史緒里/画像は本サイトの記事(https://exweb.jp/articles/-/68009)より抜粋

乃木坂46「個人PVという実験場」

第8回 3期生にとっての個人PV 1/4

■乃木坂46に加入するとは、自身の個人PVを持つこと

 2017年は乃木坂46の3期メンバーにとって、実質的な活動初年度になった。2月に初公演『3人のプリンシパル』、5月に3期メンバーのみによる単独ライブ、10月には舞台『見殺し姫』と、いずれも当時のAiiA 2.5 Theater Tokyoを会場に用いて3期メンバーだけでの公演を積み重ねてきた。活動初年度の3期生は、1・2期で構成された乃木坂46本体とはいくぶん距離を置いた別働隊のようにして、芸能者としての一歩を踏み出していた。

 この年は楽曲リリースにおいても、18枚目シングル『逃げ水』での大園桃子与田祐希Wセンターなど限られた楽曲で1・2期生と合流するにとどまっている。3期メンバーはおよそ一年をかけ、本格的にグループへと溶け合う前の下準備を整えていた。

 もっとも、乃木坂46を象徴する映像コンテンツである個人PVへの参加は早い。2017年最初のシングルリリースとなった3月発売の『インフルエンサー』では1・2期生とともに、3期生12人にとって初となる個人PVが制作された。

 当時、乃木坂46はデビューから5年を経て女性アイドルシーンの中心に立ちつつあり、加えて映像コンテンツの豊かさや特異さも徐々に知られるようになっていた。この段階で企画された初の3期生個人PVに散見されるのは、「乃木坂46に加入すること=自らの個人PVをもつこと」という前提そのものを、映像内にメタ的に織り交ぜるような手法だった。

 たとえば梅澤美波の個人PV「はじめての個人PVを見る日」(監督:真壁幸紀、飯塚貴士)は、タイトルがそのまま作品の自己言及性をあらわしている。

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