単に、そういう語りができる人が、多くの場合“年齢イジリ”を経て30代を前に徐々に表舞台からフェードアウトしていく。あるいは、俳優やママタレ、万能型タレントなどにキャリアを移行していく。もちろん、PerfumeやNegiccoなどの例もある。けれど、同様のケースはそんなに多くない。松田聖子という先例は――話がややこしくなりそうなので気づかなかったことにする。

 何はともあれ、“国民的”とも呼ばれてきたグループアイドルの立役者のひとりであり、10代のころから在籍してきた柏木が30代を迎えるというのは、なんだかエポックメイキングな出来事にも思えてくる。10代・20代の女性アイドルが、「男性アイドルのように30代・40代になっても現役でありたい」と語る姿はよく見るけれど、実際にその夢を叶えた姿を見る機会はあまりない。

 30代を迎えた柏木は、いつかテレビで「30代の現役アイドルとしてのあり方」について語る機会があるのではないかと思う。そのとき、彼女は何を語るのだろうか。たとえば、握手会で着席する理由について「もうすぐ30なので」とネタ気味に柏木は語ったが、他のグループアイドルの例に漏れず「年長であることがネタになる文化」をくぐり抜けてきた彼女は、その文化とどのような距離感で付き合うのだろうか。

 いずれにしても、そんな語りができる人は限られている。彼女は、その限られた資格を手にする。

(文・飲用てれび)

テレビの中の女たち

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