白石と西野七瀬がWセンターを務めた13枚目シングル『今、話したい誰かがいる』に収録された本作だが、「October 28」というタイトルは、このシングルのリリース日が2015年の10月28日であったことに由来する。劇中の登場人物の台詞でも示唆されるように、このドラマはまさに同シングルが発売された日を舞台にしている。そして橋本演じる主人公が「10月28日」に閉じ込められ、同一のルーティンを繰り返すタイムループものの作品として本作は仕立てられた。

 中村が手がけるドラマ型の個人PVはしばしば、SF的設定を基本軸にしつつ、どこか微笑ましいタッチで展開される。なかでも「October 28」は、そうした中村によるSFドラマ系譜上の代表作といえるだろう。

 また、この13枚目シングルは、湯浅弘章による生田絵梨花「赤い傘の人」や山岸聖太が監督した西野七瀬「靴を履かない理由がない」と深川麻衣「また、茶でも」の二作、あるいはVFXを駆使して乃木坂46の映像コンテンツに広がりをもたらした荒船泰廣が手がける能條愛未「アンゴルモアの大王の娘」など、ドラマ型個人PVの水準の高さが際立っている。

 グループが積み重ねてきた個人PVという企画が、ひとつの到達点を迎えたのがこの時期である。中村による「October 28」もまた、橋本奈々未の存在感や画面のスタイリッシュさと相まって、この充実期を彩る作品のひとつになった。

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