「私が考えるアイドルの王道は、やっぱり「裏側を見せないこと」。表のきれいな部分だけを見せるのが、アイドル本来の姿だと思います。もちろん影で努力も苦労もしているに決まっているけど、そんなことは微塵も感じさせない。それがプロのアイドルだと思うんです」(『音楽ナタリー』AKB48「11月のアンクレット」渡辺麻友&柏木由紀インタビューより)

 渡辺は王道のアイドル像を聞かれた際の発言だが、ここには渡辺の根底にあるアイドルの美学が表れている。周知の通りAKB48では『DOCUMENTARY of AKB48』シリーズのように裏側を見せることがコンテンツとして消費され、そこに価値が置かれているが、渡辺はデビュー以来一貫して「きれいな部分」だけを見せることで、ファンに夢や希望を届けてきた存在だ。この裏には渡辺がデビュー以来大事にしている「自分が信じた道を突き進む」という信念が込められている。

 2015年に放送された『情熱大陸』でも、随所にプロ意識を感じるシーンが映し出されていた。渡辺の疲労を見かねたスタッフが声をかけると、渡辺は「眠いだけです」とだけ口にし、疲れている素振りは一切見せない。メディアでも、握手会でも、ライブでも、そこにいるのはアイドル・渡辺麻友であり、渡辺麻友本人ではない。渡辺麻友というアイドルはストイックなプロ意識の上に成り立っていたのだと改めて感じさせられる。

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