乃木坂46「個人PVという実験場」
第13回 中村太洸作品の豊かさ 3/4
■中村太洸初の乃木坂46シングル表題曲MV
乃木坂46デビュー初年度の2012年からMV、個人PVの双方をコンスタントに手がけてきた中村太洸が、初めてシングル表題曲のMVを監督したのは2018年、齋藤飛鳥がセンターポジションを務める夏曲『ジコチューで行こう!』でのことだった。
https://www.youtube.com/watch?v=7eoiyP4kaAQ
(※「ジコチューで行こう!」MV)
6年にわたり乃木坂46と断続的に協働を積み重ねたのちにシングル表題曲を担当することになった中村だが、この『ジコチューで行こう!』はこれまで彼が監督してきた乃木坂46のMVとは、大きくスタイルが異なる作品である。
次週でふれるように、中村がグループ初期から携わってきたMVは、ときにギミック的な技術も用いながら世界観を作り込むものが多い。乃木坂46の映像面での実験を担う作家としても、中村の役割は貴重なものだった。
それに対して、初めて表題曲担当となった『ジコチューで行こう!』はベトナムをロケ地にとり、海辺や遺跡、夜景などロケーションの魅力をストレートに押し出した映像作品として制作された。
リゾートでの観光を楽しむようなメンバーの振る舞いを中心にした開放的な作風は、乃木坂46における中村のフィルモグラフィーの中にあって新鮮な印象を与える。