■「タイトルにはこだわりがあります」

ーー熱意に溢れていたんですね。

「熱意というか、神経質というか。“こういう書き方できるやん!?”って思い付いたら、そうせずにはいられない。気持ち悪くて。タイトルに関しても、僕は本当は帯に書いてある文言『パパがおしごとにいくと、シルクハットがひとつへる』という、ちょっといまっぽい、長めのタイトルにしたかったんですよ。朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』みたいな。でも、担当さんは“いやいや、『パパは貴族』だ”と。

 僕としては、『パパ“は”』は、あまりにもありきたりじゃないかと感じてしまって。担当さん的には、子育てエッセイのほっこり感みたいなのを出したかったらしいんですが、そもそも僕は“子育てエッセイ”っていう言葉が好きじゃない。あくまでも、職業を隠している父親と娘の攻防、“面白読み物”っていうことで書いてるので。

 “子育て”とか“イクメン”とかいう言葉をいっさい入れたくなかった。本当は“パパ”も入れてくれるなって言ってたんです」

ーー正直、子育てエッセイ本だと思っていました。

「僕的には“防衛白書”みたいなもの。自分の秘密を守るって部分で。

 大体、子育ての方針なんて立派なものもない人間ですし。唯一、“子どものしたことにはすべてリアクションを取る”っていうのは心掛けていますが、本当に、それだけ。

 いわゆる芸能人とか著名人の方々が書くような素敵なことは書けません。

 そんなこんなで、『パパは貴族』にもっと絶望感というか、ガビーン感というか、“親父が『貴族』とか言うてんの?”っていうイヤさみたいなものを込めたくて。要は、被害者目線……“娘目線”のタイトルにしたかった。なので、“が”だけはこだわりました」

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