■投手陣も力の差は歴然

 投手陣も、力の差は歴然としていた。

「初戦で投げた菅野はセを代表する速球派ですが、“かわすピッチャー”になっていました。パのバッターは、150キロ半ばから後半のストレートで押すパワーピッチャーに慣れている。通常140キロ台後半、勝負どころのみ150キロ台前半という菅野の直球は通用せず、変化球頼りになってしまった。2戦目の今村は変化球をコーナーに投げ分ける典型的な技巧派投手ですが、これもまったく歯が立たず、打ち込まれました」(前同)

 原監督は完敗に終わったシリーズ後、「FAやメジャーから1〜2人取ってきたぐらいでは、ソフトバンクに追いつけない」と漏らしたという。

 その危機感の表れだろう、巨人はオフに突入するや、“血の入れ替え”を断行した。投手陣では宮國椋丞や田原誠次、野手陣では吉川大幾ら支配下で8人、育成で12人の計20選手を戦力外に。故障を抱える直江大輔、山下航汰らには支配下から育成契約に切り替えるシビアさだ。

「原監督が裏でやろうとしている改革の一貫ですよ」

 今年、原監督に関する著書を出版するなど、巨人の内情に詳しい前出の江本氏は、球団再建計画の一歩目だと見ている。

「今の巨人は発展途上のチーム。いつまでも成績が上がらない選手をバンバン切って、“安閑と野球をするな”と刺激を与えているのだと思います。原監督は全権監督としてGMのような権限も与えられており、巨人を“戦う集団”に変えようとしています」(前同)

 選手だけでなく、コーチの村田修一、杉内俊哉を2軍から1軍に配置転換。来季に向け、急ピッチでチーム作りを進めているが、問題は山積だ。

「菅野がポスティングでメジャー移籍を目指すことは、ほぼ決まっています。巨人がずっと認めていなかったポスティングですが、山口俊をFAで獲得する条件として容認した。去年、実際に山口がブルージェイズに移籍する前例ができたことで、菅野も念願のメジャー行きが固まりました」(巨人軍関係者)

 入団から8年で101勝を挙げたエース、菅野の“流出”は、「Bクラスに落ちる危険性もある」(江本氏)ほどの大きな痛手。来季は9勝を挙げた戸郷翔征、8勝のサンチェスが“エース候補”では、なんとも心許ないのは確かだ。

「実は今オフ、巨人の補強の本命は、FA宣言が噂された中日の大野雄大でした。だが、大野が残留を決めたため、急遽、FA権の行使を表明したDeNAの投手、井納翔一に方向転換した」(前出の巨人担当記者)

 同じくFA宣言したDeNAの外野手、梶谷隆幸は巨人入りが確定。

「パンチ力のある梶谷は、1番でもクリーンアップでも使える」(前同)

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