一見して、テレビコンテンツとしてしばしば見られる街歩き番組を模した構成であることがわかるが、この作品はオープニングタイトルからテロップまで、シングルリリース当時テレビ朝日で実際に放送されていた加山雄三出演の『若大将のゆうゆう散歩』の形式を踏まえている。
同個人PVを監督した勝木友香自身、『若大将~』に携わるスタッフであり、その意味では実在のテレビ番組を自覚的に借用したオマージュといえるだろう。
もちろん、既存のコンテンツやジャンル、モチーフを用いて、ときにパロディ化しながら作り手が自身の表現へと昇華してゆくこと自体は少なくない。本連載で次週以降に扱うのもそうした作品群である。
しかし、このように実在の先行コンテンツを直接的に背負い、形式までことごとく踏襲するタイプの企画は、のちの乃木坂46の個人PVにはみられなくなっていく。そうした点で、グループ初期の模索があらわれた一作だった。