乃木坂46「個人PVという実験場」
第17回 ドキュメンタリーとアイドルの間 5/5
■オンとオフを分けることの難しさ
ここまで扱ってきた個人PVは、アイドルという職を生きる乃木坂46メンバーたちのいとなみのうちに浮かび上がる、虚と実の狭間をさまざまなかたちで描き出すものだった。それらはまた、「演じる」者たちとしてのメンバーの姿が、すぐれて現れる場所でもあった。
とはいえ、実のところ今日のアイドルについて「虚/実」、あるいは「演じている/いない」といった、いわばオンとオフを明確に二分するような見方を当てはめることは、さほど的確な見立てではない。
というのも、狭義の「ステージ」上に立っているか否かを問わず多くの時間をカメラで記録され、SNS等での発信も日常的なルーティンになり、パーソナリティが絶えず消費される今日のアイドルのメディア環境にあって、彼女たちのオンとオフは互いに融解していくためだ。どこまでを明確な表舞台と言いうるのか、峻別することは容易ではない。
それを象徴的に表すのが、乃木坂46が今年1月にリリースしたシングル表題曲「僕は僕を好きになる」のMVである。