■ここにあなたと似た人がいる社会があるよ
座っているだけで泣き出してしまいそうな気持ちのまま、とりあえずiPhoneでclubhouseを立ち上げてスクロール。誰かの声が聞きたい。そのとき、偶然、桐原ユリさんのルームが目に入ったのです。「あ、アイドルに憧れてライブを始める」の方だ、そう思い入室をクリック。
終わりの数分しか聞けませんでしたが、入室したときにわたしの名前を読み上げてくれた桐原さんの声は、漠然とした社会とダメなわたしだけの夜に風穴を開けてくれて、そのルームのなかは「うまくいかなかった日にほしい世界」が完成形として存在していました。
ああ、わたし、存在しているんだな。この単純さはいびつかもしれませんが、優しくてたどたどしいトークがつづくそのルームにいる時間は、“今日もうまくいかないわたし”ではなくて、“ただのわたし”に軸を戻すことができた気がしたのです。
すぐに、桐原さんのライブが見てみたくなり、都合のつくいちばん近い日にちの配信ライブを購入しました。その日は、トークとライブで構成されていて、ライブだけではなく人となりまで知ることができるイベントでした。
ライブができることの嬉しさや音楽の楽しさを語る様子は、あの日のルームの平和な気持ちそのものでした。しかし、これまでの自分の人生を語り始めたとたんにわたしの気持ちはザワザワしはじめました。