■発見困難ながんへの秘密兵器

 さて、がんの中には、早期発見が極めて難しいものもある。その筆頭は肝がんだろう。初期に自覚できる症状はほぼなし。表中に記した黄疸も、進行してから出る場合がほとんどだ。進行してからも症状が出ないことも珍しくなく、肝臓が“沈黙の臓器”といわれるゆえんになっている。

「ただし、患者のほとんどはB型かC型肝炎の持続感染者なので、定期的に検診と治療を受けることで予防可能です」(医療ライター)

 そして、最新のがん統計で5年相対生存率(診断されてから5年後に生存している割合)が8.9%と、がんの中で最も早期発見が難しいとされる膵臓がん。やはり、初期症状が出ることはほとんどない。

 ただし、膵臓の頭部に発生する膵頭部がんに限り、腫瘍が比較的小さい段階で黄疸が発生して病が見つかる、幸運な場合もあるという。

「さらに、がん組織から産出されるさまざまな炎症性サイトカン(免疫系細胞から分泌されるタンパク質)が、脳の視床下部に作用して抑うつ、食欲低下、睡眠障害、倦怠感、発熱を引き起こすこともあります。特に膵臓がん患者の約半数は、がんの診断前に抑うつ症状を呈するという報告もありますね」(福田氏)

 胆のうがん、腎臓がんも初期症状はない。

「胆のうがんは、胆石による慢性的な刺激が、がん発生を引き起こします。胆石ができやすいとされる40代以上、あるいは肥満の方は特に注意してください。腎臓がんは、男性患者が女性の約2倍。男性では喫煙者、肥満体質の罹患者が多いとされています」(医療関係者)

 該当者は特に意識したい。

 さて、ここまで初期症状がほとんどない、早期発見の難しいがんを紹介したが、そんな難敵に、いったい、どう対抗すればいいのか? 水上氏は、“エコー”と呼ばれる腹部超音波検査を勧める。

「これで甲状腺、肝臓、胆のう、胆管、腎臓、膵臓、膀胱、前立腺を調べられます。15分程度と手軽ですし、レントゲンやCTスキャンと違って、放射線の被ばくリスクもありません」

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